最新記事

中国

「二次元経済」とは何か? 中国ビリビリマクロリンク取材記

2017年8月4日(金)21時32分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

ビリビリワールドにて。マスコットキャラクター「22娘」「33娘」のコスプレをするコンパニオン(ビリビリ動画提供)

<日本のニコニコ動画にインスパイアされて始まった中国の動画配信サイト「ビリビリ動画」。10万人を集客する、その年に1度の祭典「ビリビリマクロリンク」で見た新潮流の実態とは?>

中国には「二次元経済」という言葉がある。

中国IT業界の雄、テンセントの映画部門であるテンセントピクチャーズの程武CEOが2015年に提唱した概念で、「優秀なアニメ・マンガ原作(知的財産=Intellectual Property、IP)を育て、ゲーム、映画、文学など関連製品に広げ、流行文化を創り上げる」という内容だ。

時価総額3兆香港ドル(約42兆円)を誇る巨大企業グループがアニメ、マンガとはなんともニッチな商売をしている......と思われるかもしれないが、不思議な話ではない。テンセントはQQや微信(ウィーチャット)というメッセンジャーアプリを筆頭に、さまざまな分野で支配的地位を築くITジャイアントだが、実はその収益の多くはゲームに由来している。

今年もスマホゲーム「王者栄耀」の大ヒットで時価総額を大きく伸ばした。むしろコンテンツを育て、ゲームに結びつけるのは彼らの本業なのだ。

ゲームという、今のIT業界で稼ぎ頭のサービスと関連しているという意味に加え、95後(1995年以降に生まれた若者)、00後(2000年代以降に生まれた若者)をいち早く取り込むという意味でも「二次元経済」は注目を集めている。

「二次元経済」において、テンセントと並び注目を集めるのがビリビリ動画だ。名前から見当がついた人がいるかもしれないが、日本のニコニコ動画にインスパイアされて始まった、中国の動画配信サイトである。ニコニコ動画から遅れること3年、2009年に開設された。

月間アクティブユーザー数では、百度(中国最大手検索エンジン)の愛奇芸、テンセントのテンセントビデオ、アリババの優酷土豆という中国ITジャイアント旗下のサイトには及ばないものの、それに次ぐ第二グループの中ではコアなユーザーがいること、ユーザーの大半が若者によって占められていること(平均年齢は20代前半)によって強烈な存在感を示している。

7月21日から23日にかけて、ビリビリ動画は年に1度の祭典「ビリビリマクロリンク」を上海で開催した。今回はその取材レポートをお届けしたい。

【参考記事】ワンピース、キャプ翼、テトリス、辞書まで映画化!? 中国第3のバブルの実態

ビリビリマクロリンクとビリビリワールドで見たもの

今回が5回目となるビリビリマクロリンクだが、2013年の第1回は参加者わずか800人というファンミーティングからスタートしている。それが今年は延べ10万人を動員する巨大イベントに成長した。

メルセデス・ベンツ・アリーナ(もともとは上海万博会場として建設されたもの。中国最大規模のアリーナ)において、3日間連続でライブを開催。初日はボーカロイドによるコンサート(中国のボーカロイドがメインだが、日本からもIA(いあ)、モノクロームが出演した)。2日目は高橋洋子、宮野真守、三森すずこなど日本人歌手によるアニメソングライブ。そして3日目は、ビリビリで動画を公開する一般配信者とGARNiDELiA、大黒摩季、LiSAなどゲスト歌手によって構成された。3日目のコンサートのストリーミング配信では延べ600万人が視聴している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独IFO業況指数、11月は予想外に低下 景気回復期

ワールド

和平案巡り協議継続とゼレンスキー氏、「ウクライナを

ワールド

中国、与那国のミサイル配備計画を非難 「大惨事に導

ワールド

韓国外為当局と年金基金、通貨安定と運用向上の両立目
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中