東大生に育てたいなら、子供に「100点」を目指させてはいけない
Yagi-Studio-iStock.-iStock.
<子供に自信を持たせ、才能を開花させるには、「80点でいい」も「100点を目指せ」もどちらも間違い。教育者であり、東大生と早大生を育て上げた母親でもある楠本佳子氏が警告する、最近の親が犯しがちな過ちとは?>
2017年にメディアを賑わせた中学生と言えば、史上最年少でプロ将棋棋士となり、デビューから29連勝を果たした藤井聡太四段。
将棋の才能もさることながら、とても14歳とは思えない落ち着きぶりに、同じ中学生を子供に持つ親からは「どうすれば、あんな子供に育つのか?」という疑問の声が聞こえてきた。そこで注目を集めたのが、藤井四段も学んだという「モンテッソーリ教育」だ。
世界のセレブや著名人、起業家たちも学んでいることから「ぜひ、わが子にも!」と思った親も多いだろうが、日本で実践しているところはまだ多くない。
ならば自分で何とかするしかない――そんな思いで、モンテッソーリ教育をベースに独自の子育てメソッドを確立し、2人の子供を東大生と早大生に育て上げた楠本佳子氏の著書『12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣』(CCCメディアハウス)は、当サイトで取り上げた記事も話題になった。
楠本氏の新刊は『12歳までに「自信ぐせ」をつけるお母さんの習慣』(同)。前書きによれば、子供は「勉強ができるから(スポーツができるから/友達がたくさんいるから)自信がつく」のではなく、自信があるから失敗を恐れずにチャレンジして、どんどん自分を伸ばしていける。そういう子供が自分から進んで勉強するようになり、さらに可能性を広げていけるという。
「80点でいい」は禁句
2017年の「全国学力・学習状況調査」(国立教育政策研究所)によると、学習塾に通っている(家庭教師を含む)小学生の割合は、全国平均で46.3%。つまり約半数の子供は、何らかの形で学校以外の勉強をしていることになる。
かつては塾に通っている子供のほうが少数派で、「とりあえず学校の勉強さえちゃんとやってくれればいい」と考える親も多かった。実際、親から「普通でいい」と言われてきた人も多いのではないだろうか。だが今では、「普通」を目指すと普通以下になる可能性が高い。半数が塾など学校以外での勉強をしている状況では、学校の勉強だけでは「中間」にも届かないかもしれないのだ。
「上」を目指している子どもの全員が、実際に「上」に行けるわけではありません。がんばっても「上」には行けずに、そこから落ちてきた子どもが中間くらい、つまり「ふつう」になるのです。
だから、中間を目指していたら、中間より下になる可能性のほうが高い、と思ったほうがいいのです。(本書25ページより)
また、親が「普通でいい」と言うと、子供はそこしか目指さなくなる。有名な「ノミの実験」でも証明されているように、生物が持つ能力は上限があればそこまでしか伸びない。本来は2メートルも飛べるノミも、50センチのところで蓋をされると、それ以上は飛べなくなってしまうのだ。
小さい頃から「普通でいい」「80点でもいい」といった制限を子供に植え付けてしまうと、それによって成長に制限をかけ、もしかするともっと伸びたかもしれない可能性を潰すことにもなりかねない。その制限は、本当に勉強してほしい中学生以降になってから外すのは困難だという。