中国株式市場、メッセージアプリが突く規制の穴
1つの取引口座を多数のサブアカウントに分割するアプリなど規制を逃れる手法が横行
1月6日、中国の株式市場では、投資家や証券会社の間でモバイルメッセージアプリなどソーシャルメディアの利用が急速に広がり、当局が取引を監視したり違法な動きを取り締まる上で障害となっている。写真は北京で5日撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
中国の株式市場では、投資家や証券会社の間でモバイルメッセージアプリなどソーシャルメディアの利用が急速に広がり、当局が取引を監視したり違法な動きを取り締まる上で障害となっている。
中国では取引におけるソーシャルメディアの利用自体は違法ではない。しかしインサイダー取引や市場操作などを防ぎ、行き過ぎた信用取引など市場の安定を損ないかねない動きを抑え込むために、確実な監視と取引記録の保持が義務付けられている。
中国証券監督管理委員会(CSRC)は昨年9月に取り締まりを実施し、社外のシステムを通して株を取引した顧客に関して十分な身元情報を集めていなかった証券会社4社などを摘発した。
また地元メディアによるとCSRCは、ブローカーが利用していた、トレーダーの規制逃れに使える外部の取引ソフトについても使用を禁止した。このソフトを使うと氏名の登録をせずに1つの取引口座を多数のサブアカウントに分割することが可能だった。
しかし当局の取り締まりにもかかわらず、モバイル経由で株式を売り買いするソフトは中国では既に当たり前になっている。
中国銀河証券<6881.HK>と長城証券は昨年、個人投資家の獲得を狙って、モバイル向けチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」上での株式取引口座開設サービスを開始。中国では株式取引の80%を個人投資家が占める。
さらに一部の機関投資家は、ブローカーへの指示すらもメッセージアプリを通じて行っている。
香港に拠点を置く中国を専門とする機関投資家向けセールストレーダーは「実際にはほとんどの人はコンプライアンス(法令順守)など気にかけておらず、ウィーチャットで注文を受けている」と話した。
もっともソーシャルメディアの普及に伴う規制面でのリスクの高まりという問題は中国に限ったことではない。