アジアの新興国、日本や中国との通貨協定が為替市場の防波堤
アナリストからは人民元の二国間スワップ協定の有効性に疑問の声も
12月16日、米国が利上げに踏み切った場合に多額の投資資金の流出に見舞われる恐れのあるアジアの新興市場国にとって、中国や日本との間で結んでいる総額2550億ドルの通貨スワップ協定が、いざという際に為替市場の混乱を防ぐ防波堤になりそうだ。ワシントンのFRBビルで昨年10月撮影(2015年 ロイター/Gary Cameron)
米国が利上げに踏み切った場合に多額の投資資金の流出に見舞われる恐れのあるアジアの新興市場国にとって、中国や日本との間で結んでいる総額2550億ドルの通貨スワップ協定が、いざという際に為替市場の混乱を防ぐ防波堤になりそうだ。
アジア諸国の中央銀行と交わしているスワップ協定の額は中国人民銀行(中央銀行)が2150億ドル、日銀が400億ドル。そのほとんどは2008年の金融危機以降に締結された。
HSBC(香港)のアジア経済調査部門共同ヘッド、フレデリック・ニューマン氏は「投資家が動揺した場合に政策当局者は巨大なバズーカが必要で、引き出し可能な公的な補完手段は極めて有益だ」と話す。その上で「万が一に東南アジアで金融不安が再発すれば、中国のほか日本も大きく前に出ると予想している」と話した。
アジア諸国の外貨準備は総額6兆7500億ドルで、その約70%を中国と日本が占める。他のアジア諸国、とりわけ南アジアと東南アジアの新興国は緩衝剤となる外貨準備が薄く、中銀の流動性供給枠が通貨防衛の層を厚くする上で役立っている。
例えば外貨準備が946億ドルしかないマレーシアは、1800億元の人民元スワップ協定を結んでいる。インドネシアは外貨準備が1002億ドルだが、中国および日本とのスワップ協定に基づいて外貨を引き出せば準備は380億ドル上積みされる。
中国は新興国とのスワップ協定で東欧や中南米よりもアジアで積極的な姿勢を採っている。加えてアジアではスワップ協定が中国人民銀行と日銀の2大中央銀行に集中しており、「大型のスワップ協定によって他の新興国に比べて恵まれた立場にあるかもしれない」(IGの市場ストラテジスト、バーナード・オー氏)との声も聞かれる。「二国間スワップ協定が使われることは稀だが、金融危機の際には役立つことが分かっている」という。