木内日銀委員「国債を永遠には買えない、限界意識されれば金利が大幅に上昇」
来年には中央銀行の国債保有比率が4割の英国を上回り、未曾有の領域へ突入
12月3日、日銀の木内登英審議委員は都内で講演し、日本経済の実力を考慮すると金融政策のみで2%の物価目標を実現するのは難しいとの持論を強調した。日銀本店前で6月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)
日銀の木内登英審議委員は3日都内で講演し、年間80兆円(残高ベース)の国債買い入れを「永遠には続けられない」ため、市場で買い入れの限界が意識されれば金利が上昇するリスクがあると警鐘を鳴らした。自身が提案する買い入れ減額の必要性を主張するともに、急激な円高・株安には一時的な大量の資金供給が望ましいとの案を示した。
来年は国債の4割を日銀保有、「未曾有の領域」
木内委員は昨年10月の追加緩和に反対。その後も一貫して国債買い入れの減額を1人で提案し続けてきた。この日の講演では現行の「量的・質的緩和(QQE)」を継続する副作用の大きさを示すとともに、急激な市場変動への対案を示した格好だ。
日銀の公式見解では物価が2%の目標2016年度後半に達成する見通しだが、木内委員は「2%は日本経済の実力をかなり上回っている」ため「17年度まで視野に入れても達成する可能性は低い」と指摘した。目標を「金融政策のみで実現するのは難しい」とし、追加緩和など「短期間で物価を押し上げようとすれば経済・物価の安定をむしろ損なう」とした。
国債買い入れ自体も壁に直面しており、株安などで国内の金融機関が国債を買い増す場合、「日銀による国債の買い入れが困難化する事態も考えられる」とした。国債買い入れの限界が「突然意識されれば、国債金利の大幅な上昇につながる可能性も考えられる」と懸念した。
日銀が現行の国債買い入れを継続すると、国債発行残高に占める中央銀行の保有比率が、現在主要国で最大の英国(約4割)を上回り「未曾有の領域に入る」と指摘した。
市場急変には短期的資金供給で対応
金融市場では、中国要因で株価が急落した8月など、木内委員に対して市場急変の際の政策対応について説明を求める声が出ていたが、木内委員は「短期的な環境変化に対して量の拡大は妥当でない」と述べ、「経済情勢が著しく悪化すれば、量の目標に拘らず一時的な円・ドル資金供給を検討すればよい」と説明した。