乗客レイプのUber運転手に終身刑で、問われる安全性
急成長中の米配車アプリを使った犯罪は、果たして「強姦大国」インド特有の問題と言いきれるのか
氷山の一角 女性客をレイプしたウーバーの元運転手(右から3人目) Adnan Abidi- REUTERS
インドのニューデリーで、配車サービス「ウーバー(Uber)」の元運転手が25歳の女性客をレイプしたとして有罪判決を受け、終身刑となった。
ウーバーでタクシー運転手をしていたシブ・クマール・ヤダブ被告(32)は先月、レイプおよび脅迫、誘拐、傷害の4件で罪を問われ、有罪を言い渡された。被害者の女性によれば、2014年12月、ウーバーで勤務先から自宅までの配車をリクエストしたが、ヤダブに人気のない場所へ連れて行かれ、目が覚めたときにはヤダブが隣にいたという。被告は無罪を主張していた。
今週、量刑を言い渡した裁判官は「(ヤダブは)自然死するまで収監される」と述べたと、アルジャジーラは報じている。AFPによれば、終身刑はレイプに対する判決としてインドでは最高刑とという。懲役刑に加え、2万1000ルピー(約3万9000円)の罰金も科せられたという。
営業停止となり、対策を打ち出したウーバー・インド
本誌の取材に対し、ウーバー社はこの一件に関して新たな声明はないと返答した。先月のヤダフの有罪判決時には、ウーバー・インドのアミット・ジェイン社長が「レイプは不快極まりない犯罪であり、(ヤダブが)法の裁きを受けたことを歓迎する」と声明を出していた。
「ウーバーは安全性を重視している。この恐ろしい事件を教訓にして、当社は事件発生以降、運転手の身元確認の強化、年中無休・24時間のカスタマーサポートの改善など、多くの対策を行ってきた」と、ジェインの声明には記されている。
ウーバーと他の同種のインターネット・タクシー配車サービスは、今回の事件後、デリーで一時的に営業停止処分となった。ウーバーは現在ではデリーでの営業を再開している。
BBCによれば、今回のレイプ被害者はアメリカでもウーバー社(カリフォルニア州に本社がある)に対して訴訟を起こしたが、こちらは示談となっている。
インドではここ数年、女性に対する暴力事件が相次いでおり、この事件は一連の悲惨なレイプ事件のひとつにすぎない。デリーの乗り合いバスの中で女子学生が集団レイプされて殺された2012年の事件は、特に世界に広く知れわたった。
一方でウーバーには、運転手の身元にまつわる不安が指摘されてきた。ウーバーは2009年にアメリカで創業され、瞬く間に各国に広まったタクシー配車サービスだが、アプリで手軽に車を手配できる反面、一定の条件を満たせば誰でも契約運転手になれる不安もあった。利用者が事前に運転手の写真や評価を確認できるシステムはあるものの、運転手と乗客のトラブルが報告されてきたことも事実だ。