最新記事

自動車

「大惨事!」VWまさかの愚行に悲鳴を上げる独メディア

排ガス規制逃れの不正で、VWだけでなく独自動車産業全体に影響が及びかねない

2015年9月24日(木)18時03分
コナー・ギャフィー

大きな誤算 「環境に優しい」ディーゼルエンジン車をアメリカ市場に売り込もうとした末に…… Dado Ruvic--Reuters

 自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題で、ドイツの自動車産業の信頼性は大きく揺らいでいる。1社の不祥事にとどまらず、ドイツの経済全体に影響が及ぶ事態に、メディアは一斉に警鐘を鳴らしている。

 VWは22日、「クリーンで燃費がよい」とディーゼルエンジン車をアメリカ市場に売り込むため、不正ソフトを使っていたことを認めた。検査時には浄化装置が作動して米環境保護局(EPA)の排出ガス基準をクリアでき、実際の走行中にはこの装置が無効化されて排ガスをまき散らし、その代わりエンジンはフルパワーで稼働する仕組みになっていた。

VW問題車による大気汚染は英産業に匹敵

 このソフトが搭載されたVW車の販売台数はざっと1100万台に達するとみられる。VWは信頼回復のためのサービスなどに必要な経費として、今年第3四半期に65億ユーロ(73億ドル)の引当金を計上することを併せて発表した。

 ドイツのジグマル・ガブリエル経済相は、このスキャンダルで「ドイツの自動車産業は優れているという評価」が揺らぎかねないと懸念を表明した。

 世界中に販売されたVWのディーゼルエンジン車は年間ほぼ100万トンもの大気汚染物質を放出している可能性がある。英紙ガーディアンの推定によると、この量はイギリスのすべての発電所、工場、農地、自動車から排出される汚染物質の総量にほぼ匹敵するという。

 VWの不祥事は「ドイツの自動車産業全体にとって破滅的な大惨事」だと、ドイツの経済紙ハンデルスブラットは嘆く。同紙は21日の論説で、高い品質と信頼性を誇っていたドイツの自動車メーカーが軒並み痛手を受けるおそれがあると警告を発した。

 2015年上半期の新車販売台数でトヨタを抜いて世界一になるとみられていたVW。成功の絶頂から奈落の底に突き落とされた転落劇は「考え得る最悪のシナリオ」だと、ARD(ドイツ公共放送連盟)は伝えた。

自動車産業史で最も高くついた愚行

 VWの株価は21日に18.6、22日に19.8%急落し、23日にも8%下落した。ドイツの大衆紙ウェルトはVWが被る莫大な損失に鑑みて、不正ソフト搭載を「自動車産業の歴史で最も高くついた愚行」と断じた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中