部活指導に時間を食われる日本の教師は「何でも屋」?
以上は各国平均値の比較であるが、課外活動の指導時間の分布を見ると、日本の特徴はもっとはっきりする。下の<図2>は、主要6カ国の分布の帯グラフである。
日本は週10時間以上の教員が最も多く、欧米では0時間(1時間未満)の比重が大きい。スウェーデンでは8割以上の教員が課外活動の指導にはほぼノータッチだ。「部活指導は教員が行う」という日本の常識は、他国と比較すると特異なものだ。
こうした部活指導の負担が、授業等の職務を圧迫している点は否定できない。日本の中学校教員の総勤務時間は世界最長だが、授業時間(準備を含む)は国際平均より少ない。勤務時間の半分以上がそれ以外の業務に食われている。他国の例を見ると、授業の比重が7~8割というのが大半だ。
現在「チーム学校」という、外部人材を学校に導入して教員の負担を軽減する方策が議論されている。その中では、部活の指導・顧問・引率を単独で行える部活動支援員(仮称)という制度も検討されている。教員が授業に専念し、教授の専門職としての力量を向上させるためだ。
教育とは子どもの成長全体に関わる営みであり、教員の仕事を授業に限定せよという主張は極端に過ぎるかもしれない。しかし教員をあたかも「何でも屋」のように見なすこともまた誤りだ。日本では、教員に対する保護者や教育委員会からの要望(注文)があまりに多く、生徒の生活指導、各種調査への回答、さらには給食費の徴収など様々な雑務を負わされる。それがもとで精神を病む教員が増えている。
政府もようやく重い腰を上げ、事態を変えようとしている。これを機会に、「教員の仕事(専門性)とは何か」という問題を真剣に議論するべきだろう。
(資料:OECD「国際教員指導環境調査(TALIS 2013)」)
<筆者の舞田敏彦氏は武蔵野大学講師(教育学)。公式ブログは「データえっせい」>