ドラッカーが遺した最も価値ある教え(後編)
「経営学の父」の膨大な著作の中から厳選された最高の教訓とは
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ピーター・ドラッカーの最初の教え子であり、ドラッカー理論の伝承者ともいえるウィリアム・A・コーエンは、ドラッカーの遺した膨大な著作から最も重要な40のテーマを抽出・整理し、その教えを現実のビジネスに適用するための具体的な方策を示した。
それが『プラクティカル・ドラッカー 英知を行動にかえる40項』(池村千秋訳、CCCメディアハウス)だ。経営上の問題が生じたときには、「経営学の父」であるドラッカーならどうするかを考え、それを行動に移すべしとコーエンは言う。そのヒントを誰でも得られるようにと、本書はまとめられた。
ここでは、本書の「英知を行動にかえる40項」の中から「ドラッカーが遺した最も価値ある教え」を抜粋し、前後半に分けて掲載する。
『プラクティカル・ドラッカー
――英知を行動にかえる40項』
ウィリアム・A・コーエン 著
池村千秋 訳
CCCメディアハウス
※ドラッカーが遺した最も価値ある教え:前編はこちら
人材の配置と昇進をおろそかにしない
ドラッカーは、人材の配置と昇進に関しても多くの有益な指摘をしていた。たとえば、それまで成果をあげていた人物を新しい役職に就けたところ失敗した場合、責任はその人物ではなく、人事を決めたマネジャーにあると述べていた。また、多くの組織に蔓延している「総合的人材」重視の発想も嫌っていた。どの側面でも傑出してはいないが、あらゆる側面で最低限の要求水準を満たしているバランスの取れた人材を探すべしという考え方は、誤りだというのだ。無難な人材ばかりになり、特定の役割に抜きんでた人材がひとりもいなくなってしまうからだ。この主張を裏づけるために、ドラッカーはアメリカ軍のふたりの将軍の例を挙げている(軍隊が伝統的に「総合的人材」を出世させてきたことを考えると、皮肉な話だ)。ひとりは、本書でもたびたび紹介してきたジョージ・パットン。もうひとりは、ドワイト・アイゼンハワーである。
ジョージ・パットンは、部下の兵士たちにやる気をもたせ、飛び抜けた頑張りをさせる能力に秀でていた。そして、死傷者を最低限に抑えつつ、戦場であらゆる使命を成し遂げることができた。しかしその半面、仲間と円滑な関係を築くことは苦手だった。わざわざ敵をつくるような言動をしばしばしたのである。対照的に、ドワイト・アイゼンハワーは戦場での実戦経験がなく、もしパットンの役職に就いていたら惨憺たる結果に終わっただろう。しかし、さまざまな経歴と文化をもつ高官たちを互いに協力させ、対立を最小限に抑えるコツを心得ていた。第二次世界大戦でヨーロッパにおける連合国軍最高司令官を務めるうえで、アイゼンハワーは最高の人材だった。一方、戦場で陸軍部隊を率いる司令官としては、パットンの右に出る者はいなかっただろう。
ドラッカーが思うに、重要なのは、よく考え抜いて決めること、そして長所を基準に人材登用をおこなうことだ。短所に関しては、それが問題にならないような役職に就ければいい。