最新記事

テスラ

「完全な」電気自動車が現実に

新しい家庭用蓄電池がカーライフの革命的解放につながる理由

2015年5月19日(火)12時34分
ダニエル・グロス

理想に燃えて テスラのイーロン・マスクCEO Lucy Nicholson-REUTERS

 電気自動車メーカーのテスラが先月末にお披露目したのは、従前の噂どおり、家庭用の蓄電池システムだった。太陽光発電の電力を蓄えたり、電力料金の低い夜間に送電網から充電したり、非常時には予備電源として使うことができる。

 でも家庭用蓄電池なんて新技術ではないし、あまりパッとしない印象だ。多くの企業がしのぎを削っているのは、主に産業用蓄電池のほうなのになぜ──その意味を考えれば、事業の収益化に苦戦しているテスラが300億ドルもの市場価値を持つ理由も見えてくるだろう。

 テスラは富裕層の顧客に対し、新しい形の「自由」を提供してきた。ガソリンスタンドやガソリン税、そして排出ガスなどからの自由だ。ただし有害物質の排出に関しては、テスラも完全に自由とは言えない。アメリカでは、テスラ車を動かす電気はほとんどが化石燃料由来だからだ。風力発電や太陽光発電の普及が進んでいるとはいえ、昨年アメリカで発電された電力の約67%は石炭、天然ガスなどの化石燃料によるものだった。

 太陽光を使った電力貯蔵には2つのメリットがある。1つは、日中に生産した余剰電力で蓄電池を充電できること。もう1つは、ドライバーを化石燃料から解放することだ。

 太陽光パネルとテスラ車を持っていても、自動車通勤の場合、車載電池を充電するのは夜間。つまり太陽光発電を利用できない時間帯だ。だが日中に太陽光で蓄電池に充電しておけば、夜間に車載電池を充電できる。

 この組み合わせは、移動手段と燃料の新たなモデルとなるだろう。旧来は化石燃料を掘り、その精製と輸送に大量のエネルギーを費やしてきた。排出物が多い上、かなり非効率的だ。新たなモデルでは燃料は自宅の屋根で静かに安価に「栽培」される。有害物質や悪臭を出さず、燃料自体の輸送に大量のエネルギーが割かれることもない。なんと自由なことか。

© 2015, Slate

[2015年5月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過激な言葉が政治的暴力を助長、米国民の3分の2が懸

ビジネス

ユーロ圏鉱工業生産、7月は前月比で増加に転じる

ワールド

中国、南シナ海でフィリピン船に放水砲

ビジネス

独ZEW景気期待指数、9月は予想外に上昇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中