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テスラ「完全な」電気自動車が現実に
新しい家庭用蓄電池がカーライフの革命的解放につながる理由
理想に燃えて テスラのイーロン・マスクCEO Lucy Nicholson-REUTERS
電気自動車メーカーのテスラが先月末にお披露目したのは、従前の噂どおり、家庭用の蓄電池システムだった。太陽光発電の電力を蓄えたり、電力料金の低い夜間に送電網から充電したり、非常時には予備電源として使うことができる。
でも家庭用蓄電池なんて新技術ではないし、あまりパッとしない印象だ。多くの企業がしのぎを削っているのは、主に産業用蓄電池のほうなのになぜ──その意味を考えれば、事業の収益化に苦戦しているテスラが300億ドルもの市場価値を持つ理由も見えてくるだろう。
テスラは富裕層の顧客に対し、新しい形の「自由」を提供してきた。ガソリンスタンドやガソリン税、そして排出ガスなどからの自由だ。ただし有害物質の排出に関しては、テスラも完全に自由とは言えない。アメリカでは、テスラ車を動かす電気はほとんどが化石燃料由来だからだ。風力発電や太陽光発電の普及が進んでいるとはいえ、昨年アメリカで発電された電力の約67%は石炭、天然ガスなどの化石燃料によるものだった。
太陽光を使った電力貯蔵には2つのメリットがある。1つは、日中に生産した余剰電力で蓄電池を充電できること。もう1つは、ドライバーを化石燃料から解放することだ。
太陽光パネルとテスラ車を持っていても、自動車通勤の場合、車載電池を充電するのは夜間。つまり太陽光発電を利用できない時間帯だ。だが日中に太陽光で蓄電池に充電しておけば、夜間に車載電池を充電できる。
この組み合わせは、移動手段と燃料の新たなモデルとなるだろう。旧来は化石燃料を掘り、その精製と輸送に大量のエネルギーを費やしてきた。排出物が多い上、かなり非効率的だ。新たなモデルでは燃料は自宅の屋根で静かに安価に「栽培」される。有害物質や悪臭を出さず、燃料自体の輸送に大量のエネルギーが割かれることもない。なんと自由なことか。
© 2015, Slate
[2015年5月19日号掲載]