最新記事

キャリア

「卵子凍結手当」は働く女性の味方?

妊娠を先延ばしにできるフェイスブックの新制度に賛否両論

2014年10月15日(水)16時06分
バーバラ・ハーマン

真の狙いは 有能な女性をできるだけ長く働かせるためのザッカーバーグの「罠」? Robert Galbraith-Reuters

 フェイスブックとアップルが女性社員の卵子の凍結保存に手当を支給する、と米NBCニュースが報じた。癌治療などの医療目的以外で、企業が卵子凍結を支援するのはこれが初めて。フェイスブックはすでにこの制度を開始し、アップルも来年1月に始める予定だ。

 働く女性が妊娠を先延ばしにして男性と対等に仕事をする助けになる、と称賛する意見もある。その一方で、競合他社に社員が流れるのを防ぎ、より長時間、より熱心に働かせるために企業が使う多くの「特別手当」の1つに過ぎない、という見方もある。

 ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌のエマ・ローゼンブルームは今年4月に掲載された卵子凍結と女性のキャリアに関する特集記事で、「経口避妊薬(ピル)以降では初めて、家族計画や女性のキャリアプランを変える可能性がある医療技術が見つかった」と、卵子凍結の今後に期待を示した。

 この記事によると、卵子を凍結保存する女性の平均年齢は37歳。最近では30代前半で卵子凍結を望む女性が増えている。卵子の摘出から凍結までの1回の費用は約1万ドル。年間の保存費用は約500ドルだ。アップルとフェイスブックは、最高2万ドルまで費用を援助する。

 不妊治療の専門家には、この制度が女性社員の働きに応える「報酬」だと評価する声がある。しかし逆に「子供は作るな」という無言の圧力になると危惧する意見もある。ハーバード大学法科大学院のグレン・コーエン准教授は、「働く女性はこの制度を『女性が妊娠することを受け入れがたいと会社が考えている』サインと受け止めるのでは」とブログに書いている。

 IT業界のゴシップやニュースを扱うサイト「バレーワグ」のブロガー、ニターシャ・ティクは、この手当を「社内に設置されたメニュー豊富なカフェテリア」と同じだと批判した。つまり「従業員をオフィスと仕事に縛りつけるための豪華なアメニティー」のようなものだ、と。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル一時2週間ぶり安値、トランプ関税

ワールド

米ロス北部で新たな山火事、延焼拡大で約1.8万人が

ビジネス

トランプ氏の関税収入の減税財源構想、共和党内から反

ワールド

シリア経済、外国投資に開放へ 湾岸諸国と多分野で提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中