「卵子凍結手当」は働く女性の味方?
妊娠を先延ばしにできるフェイスブックの新制度に賛否両論
真の狙いは 有能な女性をできるだけ長く働かせるためのザッカーバーグの「罠」? Robert Galbraith-Reuters
フェイスブックとアップルが女性社員の卵子の凍結保存に手当を支給する、と米NBCニュースが報じた。癌治療などの医療目的以外で、企業が卵子凍結を支援するのはこれが初めて。フェイスブックはすでにこの制度を開始し、アップルも来年1月に始める予定だ。
働く女性が妊娠を先延ばしにして男性と対等に仕事をする助けになる、と称賛する意見もある。その一方で、競合他社に社員が流れるのを防ぎ、より長時間、より熱心に働かせるために企業が使う多くの「特別手当」の1つに過ぎない、という見方もある。
ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌のエマ・ローゼンブルームは今年4月に掲載された卵子凍結と女性のキャリアに関する特集記事で、「経口避妊薬(ピル)以降では初めて、家族計画や女性のキャリアプランを変える可能性がある医療技術が見つかった」と、卵子凍結の今後に期待を示した。
この記事によると、卵子を凍結保存する女性の平均年齢は37歳。最近では30代前半で卵子凍結を望む女性が増えている。卵子の摘出から凍結までの1回の費用は約1万ドル。年間の保存費用は約500ドルだ。アップルとフェイスブックは、最高2万ドルまで費用を援助する。
不妊治療の専門家には、この制度が女性社員の働きに応える「報酬」だと評価する声がある。しかし逆に「子供は作るな」という無言の圧力になると危惧する意見もある。ハーバード大学法科大学院のグレン・コーエン准教授は、「働く女性はこの制度を『女性が妊娠することを受け入れがたいと会社が考えている』サインと受け止めるのでは」とブログに書いている。
IT業界のゴシップやニュースを扱うサイト「バレーワグ」のブロガー、ニターシャ・ティクは、この手当を「社内に設置されたメニュー豊富なカフェテリア」と同じだと批判した。つまり「従業員をオフィスと仕事に縛りつけるための豪華なアメニティー」のようなものだ、と。