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租税回避NYの高級不動産が新たな資産隠し場所に
規制が厳しくなったスイスの秘密口座の代わりとして富裕層から引っ張りだこ
資金洗浄も ひとたび不動産に化ければ資金の出所はわからない仕組み Spencer Platt/Getty Images
富裕層の資産隠しといえばスイスの銀行の秘密口座が有名だが、それに代わる「新商品」として人気なのがニューヨークの不動産市場だ。いくつものダミー会社と見て見ぬふりをするブローカーや弁護士のおかげで、国外富裕層の資金がニューヨークの高級物件に流れ込んでいる。
この現象を報じたニューヨーク誌によれば、ひとたび資金が不動産に化ければ、資金の出所はほぼ特定不可能になる。
だがニューヨークの不動産が裕福な外国人のための「租税回避地」になる一方で、米財務省はアメリカ人には外国口座に関する情報開示を強化している。
先週、アメリカ人の租税回避を防止するための外国口座税法遵守法(FATCA)が発効した。これにより国外の銀行や金融機関はアメリカ人の口座保持者を内国歳入庁(IRS)に報告しなければならなくなった。これまで7万7000以上の機関がIRSに登録している。
FATCAの実施は、富裕層の資金を秘密裏に扱うスイスの銀行の終わりを意味する。スイス最大の銀行であるUBSとクレディスイスは、既に米司法省の捜査を受け、脱税を助けたとして罰金を科されている。
FATCAで特に打撃を受けるのは、国外の資産が多い国外在住者だ。13年にアメリカ国籍を放棄する人の数が記録的に増えたのは、これが原因かもしれない。
そうだとしたら、彼らの資金はマンハッタンの高級マンションの購入という形でアメリカに戻ることになるだろう。
© 2014, Slate
[2014年7月15日号掲載]