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子育てフェイスブックが「犬の保育園」をつくる理由
ペットの保育園は作れても「人間用の保育園」をつくれない矛盾
規制の壁 豪華な社宅を作ったフェイスブックにさえ保育園には危険すぎた Beck Diefenbach-Reuters
社員の生活をあらゆる角度からサポートするため、フェイスブック社はシリコンバレー本社の近くに巨大な社員のための住居棟コンプレックスを建設すると発表した。建築費1億2000万ドルを投じ、394世帯が入居できるこの施設には、スポーツバーや美容院、そして社員のペットを預かる「犬の保育園」ができるという。
だが、社員の生活のサポートに不可欠なのに、この計画に含まれていないものがある。社員の子供たちを預かる保育園だ。
保育サービスが民間にゆだねられているアメリカでは、まともな保育施設に子供を預けようと思えば法外な金額がかかる。高額な保育料は多くの中流家庭の家計を圧迫し、貧困層がわが子に質の高い保育を受けさせる機会を奪う。これは突き詰めれば、国の存亡にも関わる問題だ。
なのに、なぜフェイスブック社のような対応が起きるのか。その答えは、カリフォルニア州で保育施設を合法的に運営するための条件を定めた文書をざっと見るだけでわかる。
「食事と食事の間に、すべての子供たちにおやつを提供すること」、おやつには「4大食品群のうち、2つ以上の食品群に属する食品を用いること」といったルールは、本当に法律で定めるべき事柄だろうか。
保育業界に一定の規制が必要なのも理解できるが、がんじがらめの規制が存在することで、保育園設立のハードルは非常に高くなる。社員のために保育園をつくるのは、ペット預かりセンターをつくる何倍も面倒なのだ。
規制があれば、法令違反や訴訟のリスクも増える。実際、訴訟に備えて保育施設向けの保険を提供するサービスも山ほど存在している。
その結果、企業は社内保育園の開設に及び腰になる。社員の福利厚生の一環として無料でアイスクリームを提供し、それが不味いと酷評されても、企業としてはアイスクリーム代が無駄になっただけの話。だが、保育園の運営をめぐって何かミスをすれば、当局からルール違反をとがめられるうえに、訴訟リスクにもさらされる。
保育ビジネスに特化した企業なら、それもビジネスの一環だ。しかし、フェイスブックはSNS関連のソフト開発の会社だ。社員の子供たちのために保育園をつくるというアイデアは一見よさげに思えるが、弁護士に反対されるだろう。その結果、「ペット保育園」が生まれるわけだ。
© 2013, Slate