最新記事
景気回復に実感なし、韓国経済に潜むリスク
予想以上の経済成長を遂げているのに、企業と消費者の間で不安が消えない理由とは
根深い不安 買い物客でにぎわうソウル市内だが、韓国全体の消費者心理指数はアジア平均の半分 Chung Sung-Jun/Getty Images
「アベノミクス」で経済が好転しているにもかかわらず、給料が上がらない、景気回復を実感できない──。そう嘆く日本人と同様に、韓国でも経済の動きと消費者心理には乖離がある。
韓国銀行(中央銀行)が先週発表した今年第2四半期のGDP成長率は市場関係者の予想を超え、過去2年間で最も高い2・3%(年率、前年比)になった。個人消費と政府支出の拡大により、四半期ベースでは前期比で1・1%の伸び。金融情報サービスのブルームバーグがエコノミストの予想値を平均した0・8%を上回った。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のエコノミスト、ルイ・ラムとレイモンド・ヤンは今回の発表について、韓国最大の貿易相手国である中国の経済成長が鈍化しているにもかかわらず「堅調だ」とみる。
「韓国経済は景気の底を打ったようだ。今年下半期は、アメリカ市場の回復や補正予算の実行で、緩やかだが成長率はさらに改善するだろう」と、2人はANZのリポートの中で分析している。
韓国政府も景気刺激の波に乗っているようだ。追加予算を含めた政府支出は、155億ドルと前期比で2・4%増加。韓国銀行は、財政と金融刺激策により14年の成長率は4%に達すると予測する。「今回の経済指標からすると、追加的な金融緩和を求める声は弱まり、韓国銀行は金利を上げるだろう」と、韓国・東洋証券のアナリスト、イ・ジェヒュンはブルームバーグに語っている。
改善しない消費者心理
だがその一方で、韓国の企業や消費者はいまだ景気回復を実感できないでいる。
大韓商工会議所が行った調査によれば、9割の企業が「経済の見通しは明るくない」と感じている。調査対象の企業の87%は、売り上げ不振や、注文と利益の減少から景気回復を実感できていない。さらに3割近くの企業は今年下半期に景気が悪くなるとみており、景気改善を見込んでいるのはわずか2割だけだった。
消費者も先行きには悲観的だ。消費者市場などの調査を行う米ニールセン社の調べによると、韓国の消費者心理(指数)はアジア平均の半分でしかない。韓国の消費者のうち9割は雇用情勢に、8割は消費に対して悲観的な見方をしているという。ニールセン・コリアのシン・ユンヒは、「消費者心理は中国や日本、アメリカで徐々に回復している」と言う。「韓国では厳しい雇用情勢や、多くの世帯で家計が苦しくなっていることから、今のところ改善の兆しは見られない」
OECD(経済協力開発機構)で事務総長の金融部門特別アドバイザーを務めるエイドリアン・ブランデル・ウィグナルは訪問先のオーストラリアで、円安が韓国や中国、台湾などほかのアジア諸国の経済に打撃を与え続けており、ドル高が始まれば状況はさらに悪くなると話した。
またオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー誌の取材に対して、「円安がさらに進み、アメリカの景気回復と金利上昇でドル高になれば、アジアにとってダブルパンチだ」とも語っている。
もう1つの不安要素は、北朝鮮との関係悪化だ。両国は先週、開城工業団地の操業再開をめぐる6度目の南北実務協議を行ったが、結局、議論は平行線に終わった。
朝鮮半島情勢がまたしても緊張するような事態になれば、韓国経済は円安、ドル高に加えて北朝鮮というトリプルパンチを食らうかもしれない。
From the-diplomat.com
[2013年8月 6日号掲載]