最新記事

ヨーロッパ経済

暴動で露呈したスウェーデンのひずみ

人も羨む高福祉国の人々が爆発した理由は何か

2013年6月5日(水)17時05分
ポール・エイムズ、藤田岳人(本誌記者)

北欧よ、お前もか ストックホルム北西部リンケビューで放火された車(5月23日) Scanpix-Reuters

 若者たちが車に火を付け、警官隊に石を投げ付ける──。手厚い福祉制度と堅調な経済成長で、世界が羨む豊かな国であるはずのスウェーデンが、連日の暴動に揺れている。

 発端は5月中旬、首都ストックホルムの北部でなたを振り回していた地元の69歳の男性を警官が射殺した事件。これに反発した抗議運動が暴走し、首都の各地に広まった。警察署や学校などが襲撃で破壊され、22日には一晩で90件の火事が発生した。

 暴動の背景にあるのは、ヨーロッパの成功モデルとされる社会制度の裏で拡大してきたひずみだ。スウェーデンはこれまで、高齢化が進むなかで労働力を増強するため、欧州諸国の中でも積極的に移民を受け入れてきた。暴動が起きた地区も人口の8割が中東やソマリアなどからの移民やその子孫だとされる。

 だが彼らすべてが国の豊かさの恩恵を受けているわけではない。移民系の失業率は16%に達し、将来への不安や差別的な扱いにいら立ちを募らせている。

 現在ではOECD(経済協力開発機構)加盟国で最も急激に格差が拡大するスウェーデン。そのひずみは簡単に修正できないほど大きくなっていたようだ。

From GlobalPost.com特約

[2013年6月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念

ビジネス

米国株式市場=続伸、堅調な経済指標受け ギャップが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米景気好調で ビットコイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中