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ゲームライバルを圧倒したプレステ4の寛大さ
新製品でプレステと正面対決したXbox Oneが犯した「3つの敗因」とは?
完勝 世界最大級の見本市でプレステ4が次世代ゲーム機の王者に Gus Ruelas-Reuters
先週ロサンゼルスで開催された世界最大級のゲーム見本市、エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ(E3)。その熱気たるや、先の大統領選挙も顔負けだった。
この見本市に「出馬」したのはマイクロソフトのXbox Oneとソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のプレイステーション4。Xboxが8年ぶり、プレイステーションが7年ぶりの新製品発売を予告して以来、ゲーマーたちはその発表を待ち受けていた。その期待度は、リーマン・ショック後の景気後退による購買力の減少もものともしない勢いだ。
そして待ち望んだ瞬間がやって来た。勝負は、プレイステーション4の圧勝だった。堂々たるゲーム機の王者の誕生だ。
ゲームのニュースサイト、IGNが8万4000人のユーザーを対象に行った人気投票によると、75%がプレイステーション4を一番のゲーム機に選んだ。その差はあまりに圧倒的だったので、Xbox Oneに投票した人はマイクロソフトの「さくら」扱いされたくらいだ。
なぜプレイステーション4は勝利したのか。関係者によれば、勝因は3つある。「ネットにつながなくていい」「ゲームソフトの交換や中古ソフトの売買ができる」、そして「価格」だ。
「ネットにつなぐ」のは当然と思われるかもしれないが、ゲームの世界ではこれが勝敗を分ける大問題なのだ。Xbox Oneの場合は「少なくとも1日1回」のネット接続を求められる。だがそうなると、絶海の孤島とか山奥のキャンプでは遊べないことになる。
ゲーマーの「怒り」を回避
友達同士のソフト交換や中古ソフトの売買についても、両社の立場は大きく異なる。Xbox Oneでは、欲しいゲームは新品を買うしかない。ゲーマーはこれに憤慨している。年内に過激なゲーマーによる大規模なデモ行進が予定されているほどだ。ところがSCEの立場はまったく違う。「ゲームソフトの交換も中古の売買も、どうぞご自由に」だ。
最後は価格。会場は既にSCEの寛容さに感動していたが、ゲーマーが最も気にするのは価格だ。マイクロソフトはXbox Oneの価格を499㌦に設定すると手の内を見せていた。SCEは同じ価格で勝負しても勝っただろう。だがSCEはもっと寛大だった。発表されたプレイステーション4の価格はライバル機より100ドルも安い399ドル──もちろん会場には衝撃が走った。
SCEはどこで「勝利のレシピ」を手に入れたのか。SCEアメリカのハードウエア・マーケティング担当副社長のジョン・コラーは、3つの決断の背景にはユーザーたちとの大議論があったと語る。
中古ソフトの売買については「利用者の側に立つ」。利用者は中古ソフトを売って新しいソフトを買うことが多く、コラーは「中古ソフトの売買は新製品の売り上げにもつながる」と言う。そして、これを禁じたらゲーマーが猛反発することも分かっていた。「顧客を怒らせるのは、当社の望むところではない」
ネットにつなげなくても遊べる、というのも同じ考えからだ。「ゲームソフトを本体に入れるだけ。それ以上、利用者に負担をかけたくない」。コラーは価格の話には触れたがらない。だが価格はライバル社のそれが発表される前から決まっていたと言う。「価格は徹底した過去の情報分析からはじき出した。だから消費者の心を打つ」
これまでのゲーマーたちの反応からすれば、まさに「心を打つ」という表現がピッタリだ。
[2013年6月25日号掲載]