最新記事

貿易

アメリカとEUが夢見る巨大な自由貿易圏

オバマが打ち出した米欧間のFTA構想が現実になれば、雇用創出効果は絶大に

2013年2月14日(木)17時01分
マリヤ・カリムジー

2期目の目玉 TPPと並行して欧州とのFTA協議も始めると発表 Charles Dharapak-Pool-Reuters

 オバマ米大統領は先日の一般教書演説で、EU(欧州連合)との包括的な自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉を始めると発表した。「環大西洋の包括的な貿易・投資協定についてEUと協議を開始する。米欧間の公正で自由な貿易は、アメリカに多くの高賃金の雇用を生み出す」

 同時にオバマは、アジア太平洋諸国とのTPP(環太平洋経済連携協定)交渉も加速させると表明。東西の通商交渉をテコに雇用創出と景気刺激を本格化させる姿勢を鮮明にした。

 欧州各国も先週、ブリュッセルで開かれたEU首脳会議でFTA協議の開始に合意。イギリスのキャメロン首相は、「大西洋の両側に雇用を生み出し、双方にさらなる繁栄をもたらすだろう」と持ち上げた。

 米欧FTAが実現すれば、巨大な単一自由貿易圏が誕生する。世界のGDPにおけるアメリカとEUのシェアはすでに約5割を占め、米欧間の貿易高は世界貿易の3分の1に達している。

 双方とも6月末までに交渉をスタートさせ、2年以内に完了させたいと考えている。とはいえ、交渉がスムーズに進む保証はない。FTAの発効に際して、アメリカでは議会の承認が必要だが、議会にはEUへの不信感をもつ保守派議員が大勢いる。

 また、10年以上前に始まりながら、協議が難航している世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)への影響を懸念する声もある。特定の国や地域との個別交渉が進展することで、多国間の枠組みで貿易自由化を推進するドーハ・ラウンドの足を引っ張りかねないからだ。

 それでも、米欧FTAをめざす流れは変わらないだろう。実現すれば、アメリカにとってもEUにとっても「ウィンウィンの状況」になると、欧州委員会のバローゾ委員長は熱く語っている。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防

ワールド

アングル:トランプ氏のカナダ併合発言は「陽動作戦」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中