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米中関係華為技術はアメリカの政治的「人質」か
米議会に「安全保障上の脅威」と決めつけられた世界第2位の通信機器メーカー、華為の苦しい立場
“中国代表” 国家を代表する立場だけに政府の意向を完全には無視できない(深センの華為本社に立つ警備員) Bobby Yip-Reuters
中国通信大手の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)にとって、アメリカ人の信用を勝ち取ることは至上命題だ。「人民解放軍と癒着している」「中国政府から過度の口出しを受けている」といった批判が出るたびに、世界第2位の通信機器メーカーに躍進した同社は必死に反論してきた。
それでも、事態は悪い方向に向かう一方だ。米下院情報特別委員会は10月8日、華為とライバル社の中興通訊(ZTE)の通信インフラビジネスをアメリカの安全保障にとって脅威と認定、両社の製品を排除するよう米政府に求める報告書を発表した。
真実はどうであれ、華為にとっては深刻な打撃だ。中国軍部の手先でないことを決定的な形で証明するのは困難な話。報告書では、製品に罠が仕掛けてあるという噂話や、同社が中国軍にサイバー戦争対応の部品を提供しているという政治家の主張が挙げられているが、それを裏付ける証拠はあまり示されていない。
それでも、一度付いた汚名は簡単には消えない。携帯端末から基地局なども手掛ける華為は、各国の政府というより消費者や企業に支持されて急成長を遂げてきた。だが企業幹部や愛国的なアメリカ人消費者は今後、「国家安全保障の脅威」とされた同社との取引を躊躇するだろう。
問題の元凶は華為ではなく、中国政府と、その国家資本主義モデルにある。1979年の国交樹立以来、米中の信頼関係は浮き沈みを繰り返してきた。
2001年には、中国が米ボーイング社から購入した江沢民(チアン・ツォーミン)国家主席の専用機に盗聴器が仕掛けられていた疑惑が浮上。両国関係は最悪の状態に陥った。中国政府がボーイングから旅客機200機を総額190億ドルで購入し、この件で和解するには10年を要した。
株式を公開しても解決にはならない
華為に巻き返しの手段はあるのか。噂されているIPO(新規株式公開)が実現しても、表面的な影響しかないだろう。同社はすでに財務内容を公開しているし、既に株式を公開しているZTEも今回の批判をかわせなかった。
むしろ、古参の役員ばかりで占められている取締役会を変革したほうがいいかもしれない。収入の3分の2を国外で稼いでいるのだから、国際経験の豊富な人材を取締役会に加えるのは当然ではないか。
とはいえ、一企業の力ではどうしようもないこともある。中国経済はあらゆる面で国家に細かく統制されており、中国企業が政府主導の経済から距離を置くことは不可能だ。中国の政治家に「中国代表」と評される華為が国外のビジネスを切り離すのは不可能だろう。
米中の政治的関係が改善する日まで、華為とZTEは政治的な「人質」という立場から逃れられそうにない。
© 2012, Slate