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内幕本フェイスブックを動かすお子様社員たち
元女性社員が暴くSNS最大手の素顔はセクハラが横行する男中心社会だった
部下もトップも 未熟な行動が目立ったのはザッカーバーグCEO(左)も同じ REUTERS
キャサリン・ロッシが名門ジョンズ・ホプキンズ大学の大学院を中退して、SNS最大手フェイスブックの51人目の従業員になったのは05年のこと。入社してみて分かったこと、それはフェイスブックは未熟な行動とセクハラがまかり通る、まるで男子学生のサークルのような会社だということだった。
ロッシはフェイスブックの内幕を描いた著書『少年王たち──ソーシャル・ネットワークの中心地への旅』で、同社を動かしてきた企業文化を赤裸々に描いている。
入社初日のことをロッシはこう振り返る。「オフィスは、テレビゲームの女性キャラクターみたいなイラストであふれていた。どれもウエストが細くて、小さなトップスから胸がはみ出している。子供っぽくはあったけれど、私はそれほど気にしなかった。郊外で育ちハーバードを出た男の子たちなら、こういうのを都会的でかっこいいと感じるのかもしれないと思ったからだ」。その日、オフィスを案内してくれた技術者は「一部から苦情が出たので、あまりにも露骨なイラストは男子トイレに貼ることになった」と話してくれたという。
CEOのマーク・ザッカーバーグの描くフェイスブックの未来像は、壮大だが漠然としていた。「情報の流れをつくり出したい」というのが口癖だったが、反論するには具体性に欠け過ぎていたし、「反論などあり得ない」と彼自身が言っていた。
06年の冬、タホ湖へ社員旅行に行ったときのこと。安物ワインと歌で盛り上がった後、ロッシは余興で部屋に飾られていたクマの頭付き毛皮をかぶった。写真アプリを作った技術者が、当然ながら写真を撮った。「マークは私に向かって皇帝のように偉そうな身ぶりをしてみせた。クマの格好をした私は、立ったまま腹を抱えて笑った」
だがこの罪のないお遊びは思わぬ波紋を呼んだ。週明け、フェイスブックのアルバムに載った写真を見てロッシは驚いた。マークが女性従業員に服従を強いているような印象の写真になっていたからだ。その後、この写真は酔ったザッカーバーグが同僚を愚弄しているかのようなキャプション付きで、ゴシップサイトに転載された。
誕生日に顔付きTシャツ
ザッカーバーグは名刺に「俺がCEOだ、ビッチ」と書いたりもした。ある女性社員が、男性社員から「かみつきたいケツだな」と言われたと会議の席で報告したところ、ザッカーバーグは「それってどういう意味?」と答えたという。
「06年5月のマークの誕生日に、秘書からメールが来た。ほかの女性社員と同じく、マークの顔写真の付いたTシャツを着るのがその日の私の仕事だというのだ」。これに対し男性社員は、アディダスのサンダルを履くよう指示された。「女はマークへの献身を誓い、男はマークになるべし、という男女別の行動規範があるのは明らかだった」とロッシは言う。
ラスベガスへの社員旅行では高級ナイトクラブに繰り出した。ところが男性社員たちは、店の女性たちといいムードで酒を飲むどころか、彼女たちを寄せ付けなかった。ある社員などは、相手が召し使いか何かのようにシッシッと追い払ったという。
救いの神だったのが、今年6月に初の女性取締役に就任したシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)だ。ロッシは彼女に、2人の同僚男性についての相談を持ち掛けた。「数カ月後のある日、彼女は私のデスクに来てビジネスライクな低い声でこう言った。『先日の件は両方とも処理しました』。部下たちに性交渉を持ち掛けた管理職はいつの間にか降格となり、セクハラをしてきた技術者は別の部署へ異動になった」
[2012年8月 1日号掲載]