最新記事

新興国

財政危機でインドも通貨ルピーが急落

ルピーが史上最安値を更新した元凶は、財政赤字に何の手も打てない政府の無為無策

2012年5月18日(金)16時57分
ジェーソン・オーバードーフ

転落の一途? 投資家は緊縮政策を期待しているが Jayanta Dey-Reuters

 ついにここまで来たか----インドルピーは16日、対ドルで一時54.27ルピーまで下落し、史上最安値を更新した。

 この1年間でルピーはドルに対して20%以上も下落。さすがに暴落する心配はないとアナリストたちは言うが、プラナブ・ムカジー財務相の発言を聞いても緊縮政策にどこまで本気かわからないし、インド中央銀行も事実上何の手も打てそうにない。

「政府は財政再建の話を持ち出すだけで、具体性がまったくない。財政赤字削減のために何もしていない」とバローダ銀行のチーフエコノミスト、ルパ・リジェ・ニツレはインドのニュースサイトのファースポスト・ドットコムに語った。

 AP通信によれば、今後ルピーは対ドルで55ルピーまで下落するとみるアナリストもいるという。

「中央銀行にとって、通貨を立て直すのは至難の業だ」とクレディ・スイスのエコノミスト、ロバート・プライアーワンデスフォードはファーストポストに語った。「インド政府が構造改革に取り組むのを投資家は待っている。税制の見直しでも、インフラ物品・サービス税や直接税の引き上げでもインフラ投資促進策でも、何でもいい」

 いっそルピーではなく「ドルーピー(『垂れ下がった』の意味)」にでも名前を変えればいいと思うが、そうはいかないだろう。インド政府は2年前に新しいルピー記号を作ったばかりなのだ。

新マーク対決はルピーの勝ち

 アルファベットのRとヒンドゥー語の「ラ」を表す文字を組み合わせたようなルピーの新記号に、政府がどれだけ金を投じたかは分からないが、少なくともAPよりはましなデザイナーを雇ったようだ。

 関係ないが、実は前述のAP通信も約30年ぶりにロゴを新しくしたばかり。噂によれば、APはテレビ映りが悪いという理由でデザイン変更を決めたという。膨大な労力(と巨額の予算)を費やした末、今年2月に発表した新ロゴは、APという文字の下に赤い線を引いただけのもの。

 巷では、稲妻のような形をあしらったナイキの有名なロゴのまねではないかと揶揄されている。少なくとも、デザインのセンスではインド当局の勝ちだ。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

25%自動車関税、3日発効 部品は5月3日までに発

ビジネス

アマゾン、TikTok米事業買収に名乗り 5日の禁

ワールド

イスラエル、ガザ軍事作戦拡大 国連診療所などへの攻

ワールド

マスク氏、近く政権離脱か トランプ氏が側近に明かす
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中