最新記事

テクノロジー

中国でiPadの撤去が相次ぐ理由

商標権侵害で訴えられているアップルと中国当局との争いは激化する一方

2012年2月14日(火)16時23分
トーマス・ムチャ

名前が変わる? アップルが再び敗訴すれば中国本土でiPadを売れない可能性も David Gray-Reuters

 アップルが中国国内で「iPad」という商品名を使うのは、商標権の侵害だ──そう訴える中国企業とアップルの対立は、裁判を経て中国全土に広がろうとしている。

 まず、ウェブサイト「アップル・インサイダー」の記事でこれまでの流れを押さえておこう。


 アップルが「iPad」の商標権を取得したのは2006年。(イギリスを本拠とする)IPアプリケーション・デベロップメント社を介して、 台湾のディスプレイメーカー唯冠科技(プロヴュー・エレクトロニクス)から5万5000ドルで商標権を譲り受けた。

 だが唯冠科技は、この取引には中国本土におけるiPadの商標権は含まれていなかったと主張している。中国本土の商標権は、香港に本部を置く唯冠国際控股(プロビュー・インターナショナル・ホールディングス)の中国子会社が保有しているという。


 広東省深センを拠点とするこの子会社は昨年、商標権を侵害したとして中国の裁判所にアップルを提訴。アップルも逆提訴したが敗訴し、上訴している。

 今後の裁判で再びアップルの権利侵害が認められれば、中国本土でiPadを販売できなくなったり、高額な罰金を科せられる可能性もある。緊張が高まる中、事態は新たな局面に突入した。

 河北省の省都、石家荘市の一部の電気店からiPadが撤去されたと、中国メディアが相次いで報道したのだ。「地元当局に商品を差し押さえれることを恐れる一部の小売店が、iPadを倉庫に移動させている」と、中華日報は報じた。「2月9日、石家荘市新華区の検査官がiPadの販売停止に乗り出し、2日間で45台のiPadが当局に没収された」

■それでもアップルの株価は上昇中

 iPad差し押さえの動きは中国各地に広がりつつあるが、それでもアップルの株価は上昇を続けている。来月にも発表されると見られるiPad3への期待感が続いているのを受けて、13日には同社の株価は初めて500ドルの大台に乗った。

 アップルが新製品にiPadの名を使い続けるつもりでいるのは、言うまでもない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中