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テクノロジーパリス・ヒルトンに成り下がったヤフー
もはや何で生計を立てているのかも分からないが、人気だけは相変わらずで求婚者が群れを成す
人気だけ絶大 めでたくヤフーを買収するのはグーグルかマイクロソフトかアリババか Brendan McDermid-Reuters
ヤフーはIT業界のパリス・ヒルトンに成り下がった。ぼんやりして間抜けなのに人気は絶大。それでいてこの会社が何で生計を立てているのか、もはや誰にも分からないありさまだ。
そして理由はよく分からないが、パリス・ヒルトンと同じくヤフーにも多くの求婚者が秋波を送る。噂と注目の的でもある。ヤフーが面白い会社だったのは、もう遠い昔のことだというのに。
一番最近の噂によると、グーグルがヤフーを買収するという。あるいは、ヤフー買収を狙う買収会社に出資する方法を取るかもしれない。ヤフーの株式時価総額は約210億ドルと巨額で、誰にとっても単独で買収するのは難しいからだ。
だがグーグルとヤフーの合併を米独禁当局が認めるとは思えない。08年にも両社の提携案を無効にしている。グーグルはヤフーを買いたいというより、ヤフーの株価をつり上げようとしているだけかもしれない。同じく買収に関心を見せているライバルのマイクロソフトにやすやすとヤフーを渡さないために。
ヤフーの7〜9月期の売り上げは前年同期比で5%減少するなど業績は惨憺たるものだが、いまだに多くのファンを抱えている。調査会社のコムスコアによれば、アメリカでの月間訪問者数は1億8000万人近く、グーグルに次いで2番目だ。
噂では、中国の電子商取引最大手でヤフーが40%の株を持つアリババ・ドットコムも買い手候補。ネットスケープ・コミュニケーションズの創業者マーク・アンドリーセンも、シルバーレイク・パートナーズやロシアのDSTグローバルなどの投資会社と組んで買収を検討中だという。
経営失策のオンパレード
これだけ買い手が群れを成していて何も起こらないはずはないと、ヘッジファンド、アイロンファイア・キャピタルの創業者エリック・ジャクソンは言う。「おそらく1月までには買収があるはずだ」
鍵を握るのは、アリババのCEO馬雲(ジャック・マー)だ。馬は今年、ヤフーとひと悶着起こしている。馬はアリババ傘下のオンライン決済部門を本体から切り離して、自分個人の会社の傘下に置いた。ヤフーには何も知らせずに、だ。
そのせいでヤフーが保有するアリババ株の価値は下がり、ヤフー株も下げた。最悪なのは、ヤフー経営陣がまったくこの動きに気付いていなかったらしいことだ。最終的に両社は和解したが、ヤフーの投資家が喜べる内容ではなかった。
このいきさつがあるため、投資家は馬が交渉に参加しない限り買収話はしたがらない。アリババへの貸しを返してもらい、馬が二度とヤフーの価値に傷を付けられない買収方法にしなければならないからだ。
もっともアリババの一件は、近年相次いだヤフーの失態の1つでしかない。07年にはテリー・セメルCEOを追い出して共同創業者のジェリー・ヤンがCEOになった。ひどい経営音痴のヤンは、マイクロソフトからの485億ドルの買収提案を蹴ってしまった。09年にヤンに代わったキャロル・バーツは、出資先のアリババに裏をかかれた。
バーツは今年9月に解任され、ヤフーの先行きについて噂が飛び交っている。一番傑作なのは、ヤンが買収ファンドから資金を集め、ヤフーを買収して株式を非公開にし、自分がトップに返り咲くというものだ。
このシナリオの問題は、ヤンが完全に無能なくせに自分は天才だと思い込んでいるという点。彼を再びヤフーのトップに就けるのは、経営的には自殺行為に等しい。
だがエンターテインメントだと思えば、これほど面白い見せ物はない。次の展開がどうなるか楽しみだ。
[2011年11月 9日号掲載]