最新記事

世界経済

歴史が語るギリシャ債務危機の波紋

遠い昔、史上初のデフォルトを起こしたのはあの国。歴史は教える。「デフォルトは繰り返し、そして連鎖する」

2011年9月16日(金)15時13分
トーマス・ムチャ

お先真っ暗 パルテノン神殿にたちこめる暗雲は近く訪れる未来を暗示しているのか Yiorgos Karahalis-Reuters

 簡単なクイズから始めてみよう。

 問題:世界で初めて債務不履行(デフォルト)に陥った国はどこで、それはいつだったか?

a)古代ローマ(紀元後204年)
b)プロイセン(1683年)
c)ギリシャ(紀元前377年)
d)中国(1929年)

 ヒントを出そう。
「歴史は繰り返される」
「フライドポテトをパンにはさんで食べる国だ」
「パルテノン神殿といえば......」

 もうおわかりだろう。答えはc)。古代ギリシャまでさかのぼる。

 オンラインニュース「グローバルポスト」の記者バリー・ニールドはヨーロッパの債務危機についてこう書いている。


 確かに、ギリシャ経済の歴史には汚点がある。紀元前377年に世界初のデフォルトに陥り、以来2388年間、デフォルトの繰り返しだ。

 ギリシャは(現在も)デフォルト寸前であり、世界経済の足を引っ張っているが、こうした財政破綻劇はギリシャに限ったことではない。


 バリーが指摘するように、財政赤字に苦しんできたのはギリシャだけではない。以下に挙げるのは、過去に同様の運命(デフォルト)をたどった国の一部だ。

・イギリス(1600年以前に3回)
・フランス(1558〜1788年の間に8回)
・中国(1929年、1939年)
・ナイジェリア(1960年以降に5回)
・ロシア(1998年)
・アルゼンチン(2001年)

 だが間違ってはいけない。何度も繰り返しているのは、デフォルトが実は大したものではないからではない。

「(過去から)学んだ最初の教訓は、どこかの国がデフォルトに陥れば、同時多発的に他国でもデフォルトが起きる傾向があることだ」と、UBSの新興市場アナリスト、コスタ・バイエナスは言う。「1国だけで終わった試しがないことは、歴史が証明している。債務危機は連鎖的に拡大する傾向がある。多くの国が関係しているために、物事が悪い方向に傾くと、関係国すべてに影響を及ぼす」

 では現在のギリシャがイギリス、フランス、ロシア......そして過去のギリシャと同じ道を転げ落ちたとしたら、最も影響を受ける国はどこなのか?

 ヨーロッパだけではすまない。多くに国に波及するだろう。

 近く訪れるであろう真っ暗な未来に備え、オンラインニュース「ビジネス・インサイダー」がデフォルト率の高い国のランキングを作成した。

 もちろんトップはギリシャだ。だがエクアドル、ベネズエラ、パキスタンも猛追している。

 やはり歴史が語るように、「世界同時多発デフォルト」が起きるのかもしれない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中