最新記事

日本

国債は格下げでも日本経済は明るい?

米格付け会社ムーディーズは日本国債の格付けを「Aa3」へ引き下げたが、日本経済の底力には太鼓判

2011年8月25日(木)17時34分
トマス・ミュシャ

凋落の証? 他の主要な格付け機関と足並みを揃えるように、ムーディーズも日本国債の格下げを決定したが Issei Kato-Reuters

 国債の格下げを言い渡された国はアメリカだけではない。今回、日本がその仲間に加わった。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月24日、日本国債の格付けを上から3番目の「Aa2」から、1段下の「Aa3」へ下げた。

 ムーディーズは格下げの理由を3つ挙げている。日本の政権の不安定さ、脆弱な世界経済、そして今年3月の大震災と津波、原発災害のトリプルパンチによる日本経済への打撃だ。ムーディーズは次のように説明している。


 過去5年間、日本では首相が頻繁に交代するため、政府は経済・財政面での長期戦略に基づいた、効果的かつ継続的な政策を実現できなかった。さらに東日本大震災の地震と津波、そして福島第一原発の事故の影響で、日本経済は09年以降の世界的な経済危機からなかなか回復できず、デフレも悪化している。

 経済成長への期待は低い。そのことが政府の財政債務削減の目標達成や、社会保障と税制の一体改革をますます困難にしている。


 とはいえ、悪いニュースばかりではない。日本経済の今後の見通しについては、ムーディーズは安定に向かっているとの見方を示している。


 日本の大規模な経済と奥行きのある金融市場には、経済的なショックを吸収する力がある。国内の資本基盤を頼りにできるので、日本政府はどんな先進経済圏よりも低いコストで資金を集めることができる。

 世界的な金融危機と東日本大震災、そして最近の世界市場に広がる混乱の中でも、日本国債は極めて力強い「資金の安全な避難所」という位置づけを保っている。


 今回の格下げでムーディーズの日本国債の格付けは、他の主要な格付け機関と歩調を合わせたことになる。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とフィッチレーティングスは既に上から3番目の「AA−」に格付けしている。

 日本政府の反応は早かった。財務省は、1000億ドル規模の「特別基金」を設置。急速な円高に直面した日本企業の海外投資を支援することを決めた。円高対策を発表した野田佳彦財務相は、「依然として偏った円高の動きが進行している状況を踏まえて、早急に対応策を講じなければいけない」と語った。

 もっとも、根本的な「日本病」を治さない限り、頭の痛い状況は今後も続くだろう。


GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

サムスン電子、第1四半期は0.2%営業減益へ 予想

ワールド

イスラエル首相、トランプ氏との会談で対米貿易黒字な

ビジネス

独アウディ、対米輸出を2日以降停止 トランプ関税で

ビジネス

ノボ、ブラジルで肥満症薬などの生産増強に11億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    フジテレビが中居正広に対し損害賠償を請求すべき理由
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    反トランプのうねり、どこまで大きくなればアメリカ…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    流石にこれは「非常識」?...夜間フライト中に乗客が…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 7
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 8
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 9
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中