最新記事

ネット社会

フェースブックはもう賞味期限切れ?

世界市場での成長ペースが落ち始め、いずれユーザー数が減る国も出てきそう。今後の課題は、成長の速さではない新たな「成功の判断基準」をもつことだ

2011年7月25日(月)12時55分
ファハド・マンジュー

安定期の先へ ザッカーバーグCEOはSNSのどんな未来を見ているのか Robert Galbraith-Reuters

 フェースブックのアクティブユーザー(月に1回以上ログインした人)数は、5月は1・7%増と普段のペースの約半分だった。2カ月連続の低迷だ。

 フェースブックのサイトトラフィックを追跡するブログ「インサイド・フェースブック」によると、ブラジル、インド、メキシコといった新規の市場はユーザー数が大幅に増えているが、既存のアメリカ、カナダ、イギリス、ノルウェー、ロシアの市場は落ち込んでいる。

 アメリカは特に顕著で、5月のアクティブユーザーは月初めが1億5500万人、月末は1億4900万人。600万人はフェースブック以上にやりたいことがあったようだ。

 フェースブックは来年にも株式公開を予定していると言われており、それを考えると厳しい数字かもしれない。広告収入を当てにするサイトはトラフィックの増減に一喜一憂する。ユーザー数が頭打ちか減少傾向になることは、経営上の深刻な問題があるという意味でもある。

ユーザー数が10億人に達する可能性もあるが

 とはいえ、フェースブックは一時の流行にすぎないと決め付けるのは早い。インサイド・フェースブックのエリック・エルドンによると、フェースブックは市場浸透率が50%を超えたら、基本的にその国では成長が鈍る。

 SNSの短い歴史の中で、フェースブックは前例のない状況に直面している。いくつかの国では潜在的なユーザーをすべて獲得し、後はネット環境がない人や余暇でネットをあまり使わない人、SNSをかたくなに拒否する人しか残っていない。

 従来、オンラインの評価基準は「成長」だった。もちろんフェースブックは成長を続けている。今後1年で南米とアジアではユーザー数が増え、全世界で10億人を超える可能性も高い。

 ただし、その先は壁に突き当たる。世界のネットユーザーは約20億人。そのうちブロードバンド環境があって、社会生活をネットで管理したいという人は一部だ。さらに、世界のネットユーザーの約5分の1にあたる4億2000万人は中国にいるが、中国政府はフェースブックへの接続を禁止している。

 つまり、フェースブックは見込まれる市場規模の上限に急速に近づいている。上限に達すれば成長のペースは落ちる。いずれユーザー数が減少する市場もあるだろう。アクティブユーザー数は月ごとに増減し、急成長期から安定期に入るだろう。

征服から統治の時代へ

 それでいいのだ。フェースブックを帝国主義国に例えるなら、最初は容赦なく領土を拡大するが、征服できる領土をすべて制し、すべての民を服従させたら、新しい段階に進まなければならない──統治だ。

 そこで、必要不可欠なサイトになるようなツールを増やしていくことになる。実際、フェースブックは「いいね!」ボタンやコメントモジュールなどを導入してサイト外にサービスを拡大し、どこからでもフェースブックにつながるユニバーサル・ログインを構築している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中