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投資静かに迫る「第2のネットバブル」危機
再び新興ネット企業に投資家が殺到し、企業の評価額が異常なレベルまで高騰している。早くもバブル崩壊に向けた兆候も
インターネット関連の新興企業をめぐる90年代後半の「ドットコム・バブル」と、その後のバブル大崩壊を覚えているだろうか。あの惨事が繰り返されるかもしれない──。
こう考えているのは、著名なベンチャーキャピタリストのフレッド・ウィルソン。ニューヨークでユニオン・スクエア・ベンチャーズを運営するウィルソンは、既に暗雲が漂いつつあると懸念している。最近のブログでも「99年当時を彷彿させる今の状態には恐怖を覚える」と書いている。
ウィルソンは96年、パートナーと共同でベンチャーファンドをニューヨークで設立。当時ブームだったネット企業への投資を手掛けた。しかしバブルが崩壊すると、投資対象だった多くの企業が破綻。ウィルソンのベンチャーファンドは開店休業に近い状況に追い込まれた。
この挫折にもめげず、彼は05年に別のパートナーとユニオン・スクエア・ベンチャーズを設立した。ツイッターや、GPS(衛星利用測位システム)の位置情報を利用したSNSのフォースクエア、SNS向けゲーム開発のジンガなど話題の新興企業に投資を行い、再び成功を収めている。
しかしウィルソンは最近になって、不安を募らせ始めた。新興ネット企業に投資家が殺到しているため、企業の評価額がばかばかしいほどの高値につり上げられているからだ。
かつては、従業員2〜3人の企業なら評価額は500万ドル以下が相場だった。しかし「今では初期段階の企業でも3000万〜5000万ドルの評価額が付く。これはおかしい」と、ウィルソンは11月にサンフランシスコで開催されたウェブ2・0サミットで語った。
ウィルソンは特定の企業名を挙げなかったが、少し調べるだけでも異常な事態だということは分かる。フェースブックの元従業員らが創業したクオーラはネット利用者が質問を投稿したり、他の人の質問に回答したりするサービスを提供する新興企業。シリコンバレーに関する情報を発信するブログ「テッククランチ」によれば、同社には今年3月、8600万ドルの評価額が付いた。
フォースクエアは6月に2000万ドルの資金を調達した際、評価額は9500万ドルと報じられたが、当時の従業員はわずか27人だった。
より有名な新興企業の評価額も高騰中だ。今年の売上高が15億ドルに達する見通しのSNS大手フェースブックの評価額は350億ドル。ジンガは今年の売上高が約5億ドルの見通しで、評価額は60億ドルだ。
今年は5億ドルの売上高を達成するとみられるクーポン共同購入サイトのグルーポンは、60億ドルでの買収をグーグルから持ち掛けられたという噂だ。
もっとも、新興ネット企業に対する評価が過熱しているのは無理もないことかもしれない。著名ベンチャーキャピタリストのジョン・ドーアはウェブ2・0サミットで、新たな巨大市場が形成されつつあるとの見方を表明。この時代を制した企業には、投資家たちの今の想像をはるかに上回る価値が付くだろうと語った。
ドーアは、バブルの一歩手前の「細かい泡」程度の活況は起業家にとって理想的な環境で、さまざまな革新の実現につながると指摘する。
ウィルソンもこの点には同意したが、一方で「焼き直しや模倣ではなく、真に新しいアイデアに投資を集中させることが重要だ」と語った。実際、グルーポンの二番煎じとしか思えないような新興企業が数多く出現している。
認識の甘い新規参入の投資家たちが、こうした風潮を促していると批判する声もある。ウィルソンは、インターネットをろくに知らないのにネット企業に投資したいという人からの電話が後を絶たないと言う。「セレブたちが投資を始めて、私に会いたいと言うようになったら、いよいよバブル崩壊のサインだ」
この見通しが正しければ、セレブたちは「パニック映画」の最新作に出演することになる。タイトルはもちろん『ドットコム・バブル2』だ。
[2010年12月15日号掲載]