フェースブックの個人情報を研究用に使おう
5億人の会員が自発的に毎日更新してくれる国勢調査みたいなものだから研究には最適。ただし人権侵害と紙一重
プライバシーは? ユーザーに不快な思いをさせずにデータを活用する方法はあるか
世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、フェースブックはまさに個人情報の宝庫。同社のサイトで公表されている統計によれば、利用者は5億人以上。ユーザー1人当たり平均で月90回ページを更新しているという。
私は以前に、iPhone搭載のカメラを使うようになって、日々の生活を簡単に記録できるようになったと書いた。今ではさらに多くの人々が、フェースブックを更新する度に、自分の思考を半永久的に記録している。
好きなテレビ番組や身の回りの出来事、読んだ記事、家族の写真、バーチャル農場ゲーム「ファームビル」の成績、結婚式の案内まで、膨大な量の情報がフェースブック上に残されている。私は、こうした記録を誰が見ているのか、そして、そこにどんな大きなトレンドがあるのか知りたくなった。
浮気も好きな音楽もバレている
まず訪れたのは「オープンブック」。フェースブックの更新情報を検索できるサイトで、フェースブックの個人情報設定の紛らわしさを知らしめる目的で立ち上げられた。
フェースブックのユーザーは、自分の個人情報がどれほど広範にばらまかれているのか理解していない。例えば「妻を裏切って浮気した」という検索ワードを入力すると、プライバシーの欠片もない赤裸々な書き込みがリストアップされる。「うちの上司は最低」も同じだ。
だが、ここまでのぞき趣味的ではない「普通」の検索ワードを使ってみれば、フェースブックの巨大さと潜在的な便利さが明らかになる。例えば「歯磨き」で検索すると、人々が毎朝歯を磨きながら聴いている音楽がどれほどバラエティに富んでいるかがわかる。
UFOの目撃情報についての書き込みをチェックするのは楽しいし、ランチをつまみながら、人々のオーガニック食品への関心度をチェックしたり、ピザハットとタコベルの常連客を比較するのも楽しみの一つだ。
フェースブックの情報は、研究や政策目的にも役立つはずだ。公共交通の計画策定者にとっては、人々がどの地域の交通機関に大きな不満を感じているかわかれば有益だろう。教育関係者は、地域住民が地元の学校に抱いている印象を把握できる。
ITニュースサイト「リード・ライト・ウェブ」のマーシャル・カークパトリックは以前、フェースブックに対して研究用にデータを公開するよう呼びかけた。国勢調査と不動産ローンの実態を相互参照したら特定の地域や人種への差別的貸し出しが浮き彫りになったように、フェースブックの巨大ネットワークを分析すれば「それに匹敵する重要な傾向」がわかると、彼は言う。
とはいえ、ユーザーに不快な思いをさせることなく、この巨大ネットワークの情報を活用するのは容易ではない。フェースブック社は広告セールスに役立てるためにユーザー情報の分析を行っているが、技術的にどこまで可能なのかは明かしていない。
例えば、フェースブック内の情報解析ページ「フェースブック・データ・チーム」では、利用者のその日の幸福度を調査している。指標として使われるのは、ユーザーの心情を表示する「ステータス・アップデート」に含まれるポジティブな単語とネガティブな単語の数。アメリカで幸福度が最も高まるのは感謝祭の日で、かなり点差のある2位は母の日だという(ちなみに、イースターよりもスーパーボール開催日のほうが幸福度が高い)。