最新記事

ネット

フェースブックの個人情報を研究用に使おう

5億人の会員が自発的に毎日更新してくれる国勢調査みたいなものだから研究には最適。ただし人権侵害と紙一重

2010年12月2日(木)18時09分
マイケル・アガー

プライバシーは? ユーザーに不快な思いをさせずにデータを活用する方法はあるか

 世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、フェースブックはまさに個人情報の宝庫。同社のサイトで公表されている統計によれば、利用者は5億人以上。ユーザー1人当たり平均で月90回ページを更新しているという。


世界のfacebookユーザー分布

 私は以前に、iPhone搭載のカメラを使うようになって、日々の生活を簡単に記録できるようになったと書いた。今ではさらに多くの人々が、フェースブックを更新する度に、自分の思考を半永久的に記録している。

 好きなテレビ番組や身の回りの出来事、読んだ記事、家族の写真、バーチャル農場ゲーム「ファームビル」の成績、結婚式の案内まで、膨大な量の情報がフェースブック上に残されている。私は、こうした記録を誰が見ているのか、そして、そこにどんな大きなトレンドがあるのか知りたくなった。

浮気も好きな音楽もバレている

 まず訪れたのは「オープンブック」。フェースブックの更新情報を検索できるサイトで、フェースブックの個人情報設定の紛らわしさを知らしめる目的で立ち上げられた。

 フェースブックのユーザーは、自分の個人情報がどれほど広範にばらまかれているのか理解していない。例えば「妻を裏切って浮気した」という検索ワードを入力すると、プライバシーの欠片もない赤裸々な書き込みがリストアップされる。「うちの上司は最低」も同じだ。

 だが、ここまでのぞき趣味的ではない「普通」の検索ワードを使ってみれば、フェースブックの巨大さと潜在的な便利さが明らかになる。例えば「歯磨き」で検索すると、人々が毎朝歯を磨きながら聴いている音楽がどれほどバラエティに富んでいるかがわかる。

 UFOの目撃情報についての書き込みをチェックするのは楽しいし、ランチをつまみながら、人々のオーガニック食品への関心度をチェックしたり、ピザハットとタコベルの常連客を比較するのも楽しみの一つだ。

 フェースブックの情報は、研究や政策目的にも役立つはずだ。公共交通の計画策定者にとっては、人々がどの地域の交通機関に大きな不満を感じているかわかれば有益だろう。教育関係者は、地域住民が地元の学校に抱いている印象を把握できる。

 ITニュースサイト「リード・ライト・ウェブ」のマーシャル・カークパトリックは以前、フェースブックに対して研究用にデータを公開するよう呼びかけた。国勢調査と不動産ローンの実態を相互参照したら特定の地域や人種への差別的貸し出しが浮き彫りになったように、フェースブックの巨大ネットワークを分析すれば「それに匹敵する重要な傾向」がわかると、彼は言う。

 とはいえ、ユーザーに不快な思いをさせることなく、この巨大ネットワークの情報を活用するのは容易ではない。フェースブック社は広告セールスに役立てるためにユーザー情報の分析を行っているが、技術的にどこまで可能なのかは明かしていない。

 例えば、フェースブック内の情報解析ページ「フェースブック・データ・チーム」では、利用者のその日の幸福度を調査している。指標として使われるのは、ユーザーの心情を表示する「ステータス・アップデート」に含まれるポジティブな単語とネガティブな単語の数。アメリカで幸福度が最も高まるのは感謝祭の日で、かなり点差のある2位は母の日だという(ちなみに、イースターよりもスーパーボール開催日のほうが幸福度が高い)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪中銀、カナダ投資銀行の非公開会合参加を禁止 情報

ワールド

ギリシャ、今年2回目の成長予測引き下げ 欧州経済低

ビジネス

グーグル、マレーシアで2.65万人の雇用創出へ 経

ビジネス

ドラギ氏、EUの市場統合の重要性強調 「単独では競
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大谷の偉業
特集:大谷の偉業
2024年10月 8日号(10/ 1発売)

ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 2
    欧州でも「世紀の豪雨」が町を破壊した...100年に1度の記録的大雨「ボリス」
  • 3
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッション」に世界が驚いた瞬間が再び話題に
  • 4
    年収600万円、消費者金融の仕事は悪くなかったが、債…
  • 5
    「石破首相」を生んだ自民党総裁選のダイナミズムと…
  • 6
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断さ…
  • 7
    朝日新聞の自民党「裏金」報道は優れた「スクープ」…
  • 8
    南洋のシャチが、強烈な一撃でイルカを「空中に弾き…
  • 9
    ジェットスキーのロシア兵を、FPVドローンが「排除」…
  • 10
    谷間が丸出し、ボディライン丸わかり...カイリー・ジ…
  • 1
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 2
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッション」に世界が驚いた瞬間が再び話題に
  • 3
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 4
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断さ…
  • 5
    白米が玄米よりもヘルシーに
  • 6
    50年前にシングルマザーとなった女性は、いま荒川の…
  • 7
    中国で牛乳受難、国家推奨にもかかわらず消費者はそ…
  • 8
    メーガン妃に大打撃、「因縁の一件」とは?...キャサ…
  • 9
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
  • 10
    【クイズ】「バッハ(Bach)」はドイツ語でどういう…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 5
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 6
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中