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中国「自殺」工場賃上げは手始めに過ぎない
従業員の相次ぐ自殺が問題になった中国の台湾系電子製品メーカー、富士康(フォックスコン)は事態収拾に躍起になっている。同社は6月7日、自殺問題が起きた広東省深!にある工場の一部労働者の基本給を10月から月2000元(約2万7000円)へと、約65%引き上げると発表した。
中国が低賃金システムで「世界の工場」の地位を確保してきた時代は、もう終わるのだろうか。
富士康はアップルやソニー、モトローラなど世界の一流メーカーの製造を請け負う企業だ。その工場で起きた自殺問題は中国の劣悪な労働状況の実態を明らかにし、世界中の人々の関心を呼んだ。
中国の工場における賃上げは世界の製造コスト全体に影響を及ぼす。そのため、賃金問題はこれまでも論議の対象になってきた。
寮住まいで私的時間も制限
賃金アップが必要なことは間違いない。工場労働者の賃上げ率はここ10年間、物価上昇率を下回っている。香港に拠点を置く労働者の人権保護団体、中国労工通報のジェフリー・クロソールは「労働者がわずかな賃金増でなく、大幅な賃上げを要求してもおかしくない」と語る。クロソールは今回の富士康による劇的な賃上げは、ほかの工場で働く労働者を刺激するだろうとみている。
「経済が復調して経営者が儲けているのに、労働者は同じ低賃金でさらに長時間働かされている」とクロソールは言う。「賃上げを要求するのは当然だ」
もっとも、賃上げだけで労働者の置かれた状況を改善できるわけではない。出稼ぎ労働者の基本的人権に目を向け、生活環境や社会福祉を見直すことが不可欠だ。彼らのほとんどは出稼ぎ先で医療保険や教育の権利を得られず、工場の寮に住むことで私的な時間も制限されている。
そろそろ賃金だけでなく人権が問題になり始めてもおかしくない。
(GlobalPost.com特約)
[2010年6月23日号掲載]