マイクロソフト斜陽の言い訳はもう尽きた
株式時価総額でアップルに抜かれたのは「バカな投資家」のせいではなく、CEOのバルマーが無能なせいだ
失地回復? 大失敗だったビスタの後継OS、ウィンドウズ7を宣伝するバルマー(09年10月) Mark Blinch-Reuters
株式時価総額でアップルに抜かれた事実について、マイクロソフトはどんな言い逃れを考え出すのだろう。過去数年間にオフレコで聞いた同社の非公式な見解に従えば、悪いのは移り気な投資家のほうだ。アップルの派手な宣伝や消費者の熱狂に惑わされて、マイクロソフトの偉大さが見えなくなっているのだ(Newsweekは、マイクロソフトとNBCユニバーサルの子会社であるポータルサイト、msnbc.comと業務提携関係にある)。
だがニューヨーク・タイムズ紙の劇的な株価チャートなどを見ると、かつてあれほど強大だった会社がどうしたらこれほどあっという間に落ちぶれてしまえるのか、考え込まずにいられない。
CEO(最高経営責任者)のスティーブ・バルマーがいい仕事をしている、という主張ももう限界だろう。
昨年私は本誌のコラムで、00年1月にバルマーがCEOに就任してからの10年間で、マイクロソフトがいかにダメになったかを解説した。
さらにそのすぐ後には、バルマーは2010年に解任されると予測した。
新市場には乗り遅れっぱなし
私は分かりきったことを言ったに過ぎない。バルマー指揮下のマイクロソフト株はくず同然だった。07年1月に発売したパソコンの基本ソフト(OS)、ウィンドウズ・ビスタは大失敗に終わった。グーグルのネット検索、アップルのデジタル音楽、フェースブックのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)など、この10年間に出現した重要な新市場にはほぼ例外なく乗り遅れた。かつてマイクロソフトはスマートフォン向けのOSで先頭を走っていたが、今はその他大勢の一社に過ぎない。
マイクロソフトが本社を置くシアトルのシアトル・ポスト・インテリジェンサー紙は、私の批判に対してバルマーを擁護した。ビスタの次のOS、ウィンドウズ7は成功だったこと、グーグルに対抗する検索サービス、Bing(ビング)が好調なことなど、バルマーの功績を列挙している。
だが反響としてより大きかったのは、マイクロソフトの広報責任者からのもの。彼は私の予測を「悪意に満ちた仕業」と呼び、以来ほとんど口もきいてくれなくなった。毎年恒例になっているマイクロソフトとジャーナリストの2日間のオフレコ懇親会も、どういうわけか今年は招待状が届かなかった。ワォ!
だが真面目な話、マイクロソフトは今更いったい何を抗弁しようと言うのだろう? 彼らはもう何年も、悪いのは市場のほうだと言ってきた。投資家はバカだから、バルマーの下でマイクロソフトがどれほど栄えてきたかが見えないのだ、と。
バルマーがCEOに就任した直後、数カ月にわたってマイクロソフト株が大幅に下落したときも、これはバルマーのせいではなく経済のせいだと言い張った広報担当者がいた。その時のセリフはこうだ。「バルマーのCEO就任があと数カ月遅ければ、株価は下がらなかった。横ばいだったはずだ」
横ばいとは! いずれにしろ威張れた実績ではない。
追い詰められたバルマー
おそらく何か手を打つ必要があると感じたのだろう。マイクロソフトは5月26日、エンターテインメント&デバイス部門担当プレジデントのロビー・バックと、デザイン&デベロップメント部門担当CTO(最高技術責任者)のジェイ・アラードが退職したと発表した。2人とも、携帯電話やビデオゲームなど消費者寄りの製品の開発を担当していた「ビジョナリー(先見の明がある)」タイプだ。