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中国経済不動産バブル抑制へ政府が強硬策
中国の不動産市場の過熱状態を抑制するために政府がこのところ劇的な措置を導入しているところをみると、共産党幹部もどうやらアメリカの人気インタビュー番組『チャーリー・ローズ・ショー』を見ているようだ。
4月12日に同番組に出演した著名投資家のジェームズ・チャノスは、中国が不動産バブルのせいで「地獄に突き進んでいる」と発言。「不動産市場は中国経済の成長を維持する唯一のよりどころだから、彼らは不動産開発というヘロインから手を引くことができない」と話した。
唯一の成長要因ではないにせよ、かなり重要なのは確かだ。中国のGDP(国内総生産)のうち、少なくとも10分の1は不動産投資によるものだとされる。不動産と建設関連の活動がGDPの60%を占めるという試算すらある。
政府は最近、投機抑制のために不動産への課税を強化しているが、それでも不動産価格はこの2年で最速のペースで上昇している。
国民の怒りも破裂寸前
この事態に焦りを募らせているのは、ほかでもない中国政府。4月に入ってから、住宅購入の頭金の引き上げや居住証明の取り締まり強化など大規模な政策変更を加速させているのも、投資家たちを寄せ付けないためだ。17日には、さらなる強硬手段に出た。銀行(大半が国営)に対し、3軒目の住宅購入者には一切融資を行わないよう通達したのだ。
中国の政策に大きな方針転換があるときにはいつも、国家を安定させるという狙いがある。不動産価格の急騰は、低所得層はもちろん、既に手頃な価格の住宅がなくて苦労している中間所得層にとっても重荷になっている。また、一般市民が建設予定地から強制退去させられている背景には、政治家と開発業者の癒着があるとの非難も高まっている。
メディアでは河北省で自宅取り壊しに抗議していた女性がブルドーザーにひかれて死亡した事件が報じられ、インターネット上では地方で強制退去に抵抗する家族を撮影した動画が注目を集めている。
こうした国民の怒りを爆発させてはならないことは、政府も承知している。過熱する一方の不動産市場に日々流れ込む投機を、新たな政策によって抑制できるのか。政府に突き付けられている最大の課題だ。
[2010年5月12日号掲載]