最新記事

ネット

グーグルの華麗なる中国撤退

自社の評判には傷をつけずに中国だけを悪者にすることに成功したグーグルと、お粗末な対応しかできなかった中国メディア

2010年3月23日(火)17時30分
クリス・トンプソン

出口戦略 中国撤退で「株を上げた」グーグル(北京にあるグーグル中国本社ビルのロゴ) Jason Lee-Reuters

 3月22日、グーグルは中国からの撤退を決断した。これによって、中国の評判はさらに傷つけられることになるだろう。

 グーグルのやり方は実に見事といえる。厳密にはグーグルは中国語の検索サービス「Google.cn」を閉鎖したわけではない。中国本土の利用者が「Google.cn」にアクセスすると、同社が香港で運営する「Google.co.hk」に自動的に転送される。このサイトでは検閲は行わないが、中国本土のユーザーの検索結果は「簡素化」される。香港のユーザーの検索結果はこれまでと変わらない。

 グーグルは情報の自由という第一原則を守りながら、世界と中国のユーザーに分別のある選択をしたと思わせることができる。さらに中国政府に対し、香港のサイトへのアクセスを遮断するのは許さないという強気な姿勢を取っている。もし中国政府がアクセスを遮断すれば(間違いなくそうするだろうが)、中国はほんの少しの情報の自由すら許さない暴君と見られることになるだろう。

 なかなかうまい外交的な「手品」ではないか。それに比べて、中国メディアの反応はお粗末だ。国営の新華社通信はグーグルの中国撤退をこう報じている。


中国から出て行くというグーグルの脅しを受けて一部の人々は、外資系企業にとって中国の投資環境が悪化していると、性急に結論付けた。だが特定のケースに惑わされるべきではない。もっと広い視野を持つべきだ。中国は今も世界で有数の優良な投資先だ。


 中国の英字紙チャイナ・デイリーは次のような見出しを掲げた。「検閲に関するグーグルの言い訳は受け入れられない、ネチズンの声」


CVと名乗るアメリカのネチズンは、自らもネットの検閲を行っているアメリカ政府が中国を批判するのは不公平だと、怒りを表す。「グーグルは中国政府が制限したがっている情報――有害な性的コンテンツや分離主義者の活動など――を中国のサイトに載せ、13億人の国民に広めようとしている。米政府も、アルカイダや国内外のイスラム過激派などのサイトをアメリカ人が自由に検索できるようにはしないはずだ」


[米国東部時間2010年03月22日(月)16時39分更新]

*The Big Money特約
http://www.thebigmoney.com/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中