フェースブックに潜む危険な罠
人気のSNSで、知らないうちに商品やサービスを購入させられる被害が急増中
毎日数千万人がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェースブックにアクセスし、仮想の農場を経営する「ファームビル」のようなくだらないゲームに時間を費やしている。しかし気を付けてほしい。最近こうしたゲームを楽しむ人々が、意図せず商品やサービスを購入させられ、法外な料金を請求されるケースが急増している。
被害者はこうした詐欺に「偶然」引っ掛かるのではない。フェースブック用のゲーム開発業者は広告から巨額の収入を得ているが、その一部が詐欺師に利用されているのだ。
シリコンバレーの人気ブログ「テッククランチ」の筆者マイケル・アリントンは最近、フェースブックが詐欺師から儲けの分け前をもらい、その詐欺を黙認していると主張して騒ぎを起こした。「最終的に悪いのはフェースブックだ」と、アリントンは言う。
フェースブックはアリントンの指摘を否定している。広報担当のデービッド・スウェーンは、同社は詐欺広告の撲滅に努力しており、既にルールを破った広告会社2社を排除したと主張。「これまでもこれからも、われわれはユーザーに脅威や被害を与える活動の根絶のため積極的に行動していく」と、スウェーンは言う。
フェースブックはネット上で最もホットなサイトだ。ユーザー数は3億人以上に上り、今年第3四半期だけで5000万人も増えた。マーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は9月、予定よりもかなり早く「キャッシュフローが黒字転換した」と発表した。
フェースブックにこれほど人気が集まったのは、便利で素晴らしいサイトだから。だがその素晴らしさ故、詐欺師にとって格好のターゲットになってしまった。
詐欺はどのように行われるのか。例えばサンフランシスコにあるジンガ社が開発したファームビルに登録したとする。
サイトの長所を逆手に取った詐欺広告
毎月6300万人がプレーするこのゲームでユーザーは、オンライン上の畑に種をまいて作物を収穫する。種や土地などを購入するのに必要なポイントは実際にジンガ社に送金して買うことができるし、サイト上に掲載される広告をクリックし、リンク先企業の調査に協力してポイントを稼ぐこともできる。
試しにその1つ、「IQクイズ」を受けてみよう。結果を受け取るには、携帯電話の番号を打ち込まなければならない。打ち込むと携帯電話に識別番号が送られてくる。ユーザーはそれをサイトに入力するが、実は「番号を打ち込むと月額9・99ドルの星占いサービスに加入します」と細かい文字で書かれている。翌月の携帯電話の請求書を見て、初めてだまされたと気付く──。
こうした広告をばらまく会社の1つ、オファーパルに本誌が取材を申し込むと、同社の幹部は最初、ビジネスは完全に合法だと主張した。だがその2日後、同社のCEO兼創業者の辞任が発表された。新CEOジョージ・ギャリックは公式声明で「残念ながらオファーパルには誠実とは言い難い広告をばらまいた罪がある」と認め、こうした活動を中止すると誓った。
ネット上には昔から詐欺広告が存在している。だがフェースブックのユーザーはサイト上で個人情報を明かしているため、とりわけ詐欺師が狡猾な罠を仕掛けやすい。広告にはユーザー自身の名前や友人の名前といった個人情報が盛り込まれているから、免疫のないユーザーは広告をフェースブックからのメッセージだと思い込む。活字にフェースブックと同じフォントや色を使っていることもあるのだから、たちが悪い。