最新記事

世界経済

人民元切り上げの交換条件はこれだ

米欧が保護主義的な措置を2年間取らない代わりに中国が人民元を20%切り上げる──そんな取引をしてみたら?

2009年12月1日(火)15時22分
ダニエル・ドレズナー(米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授)

 どうやら中国の首相は、他国が寄ってたかって中国をいじめていて不公平だと感じているようだ。


中国の温家宝(ウエン・チアパオ)首相は11月30日、ますます多くの国が人民元を切り上げるよう中国政府に圧力を掛けていることに対して怒りをあらわにした。この2日間、EU(欧州連合)の高官が中国当局に説得を試みたが、ほとんど進展がなかったことがこれではっきりした。

南京で開かれたEUと中国の首脳会議の閉幕にあたり、温はこう述べた。「人民元の切り上げを望む一方で、厚かましくも中国に対する保護貿易主義に走る国々がある。これは公平ではない。彼らは中国の発展を抑制する政策を取っているのだ」(太字は筆者)


 中国を標的にした保護主義の台頭を温が不満に思うのはもっともだ。ただし温の発言を聞くと、安すぎる人民元がひょっとすると保護主義をあおっているのではないかという疑問が当然わいてくる。

 アメリカの通商代表部とEUの通商総局が次のような提案をしたら面白いかもしれない。


なあ温さん、不公平なタイヤ関税などについてのあなたの言い分は正しいよ。われわれと取引しないか。あなたは向こう12カ月の間に人民元を対ドルで例えば20%切り上げる。それと引き換えにわれわれは、中国製品に対する新たな反ダンピング措置や緊急輸入制限を2年間は発動しない、と発表する。どうだろうか? 


 正直言って、こうした取引が合法的かどうかは分からない。でも面白い作戦だと思う。

 ここで読者への質問だ。この取引では、どちらが先におじけづくだろうか?

[米国東部時間2009年11月30日(月)09時25分更新]

Reprinted with permission from Daniel W. Drezner's blog, 1/12/2009.© 2009 by Washingtonpost. Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、空爆でヒズボラ指導者ナスララ師殺害 イ

ワールド

石破自民新総裁、林官房長官続投の意向 財務相は加藤

ワールド

イスラエル、ヒズボラ本部を空爆 指導者ナスララ師標

ワールド

ハリス氏、南部国境地域を訪問 不法移民の取り締まり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い
特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い
2024年10月 1日号(9/24発売)

被災地支援を続ける羽生結弦が語った、3.11の記憶と震災を生きる意味

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 2
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッション」に世界が驚いた瞬間が再び話題に
  • 3
    【クイズ】「バッハ(Bach)」はドイツ語でどういう意味?
  • 4
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断さ…
  • 5
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 6
    メーガン妃が編集したヴォーグ誌「15人の女性をフィ…
  • 7
    自民党総裁選、石破氏選出を韓国メディア速報「極右…
  • 8
    中国で牛乳受難、国家推奨にもかかわらず消費者はそ…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
  • 1
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 2
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感...世界が魅了された5つの瞬間
  • 3
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断された手足と戦場の記憶
  • 4
    白米が玄米よりもヘルシーに
  • 5
    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…
  • 6
    メーガン妃に大打撃、「因縁の一件」とは?...キャサ…
  • 7
    先住民が遺した壁画に「当時の人類が見たはずがない…
  • 8
    50年前にシングルマザーとなった女性は、いま荒川の…
  • 9
    中国で牛乳受難、国家推奨にもかかわらず消費者はそ…
  • 10
    NewJeans所属事務所問題で揺れるHYBE、投資指標は韓…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 5
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 6
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 7
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 8
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 9
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 10
    無数のハムスターが飛行機内で「大脱走」...ハムパニ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中