最新記事

アメリカ経済

アメリカの雇用が年内に増え始める理由

データが物語る企業の行動パターンと、雇用創出を牽引するミニ起業家たちのパワー

2009年11月16日(月)17時56分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

起業家精神 新規雇用の3分の2近くは創業5年未満の企業が創出(ハリウッドで移動式のハンバーガー店を始めた女性) Mario Anzuoni-Reuters 

 月刊誌にホラー小説を連載している怪奇小説家さながらに、米労働統計局は毎月第1金曜日に、陰鬱な長編ストーリーの新しい章を披露する。11月6日に発表された統計によると、10月にアメリカの失業率は10.2%に上昇。被雇用者数は07年12月以降730万人減り、求人数1件当たりの失業者数はついに6.1人に達した(07年12月は1.71人だった)。

 しかし最新の一部のデータを見ると、それほど遠くない将来に、雇用が増加し始める日がやって来そうだ。景気循環の段階ごとの企業の行動パターンを考えても、そう考えるのが理にかなう。

 物事が好転するためには、その前に悪化のスピードが減速する必要がある。いまアメリカ経済はその段階にあると見ていい。08年12月~09年4月に減少した雇用が毎月平均64万5000人だったのに対して、労働統計局によれば10月に減った雇用は19万人にとどまっている。

「雇わない」経営はそろそろ限界

 ほかにも明るいデータはある。09年第3四半期、アメリカ経済の生産性は年率換算で9.5%上昇した。この現象は、経営者が経済回復の兆しに対して疑心暗鬼になっていて、需要が増えても新たに社員を雇わず、既存の社員にたくさん働かせて対応しようとしていることの表れだ。

 しかし、このやり方には限界がある。「何世紀にもわたる経済の動きを見れば分かるように、7%ないし9%というレベルの生産性アップは2~3四半期以上続かない」と、景気循環調査研究所(ニューヨーク)のラクシュマン・アチュタン所長は言う。「人々が持ちこたえられなくなる」

 アメリカ経済の第3四半期の成長率は、年率換算で3.5%。第4四半期もこのペースが続けば、企業は新たに人を雇うしかなくなると、投資銀行MKMパートナーズのチーフエコノミスト、マイケル・ダーダは言う。「ひょっとすると、暮れまでには雇用が増加し始めるかもしれない」

 農機具のジョン・ディーアや土木機械のキャタピラーなど、解雇した工場労働者の再雇用を開始した企業もある。転職斡旋会社のチャレンジャー・グレイ&クリスマスによれば、10月にアメリカ企業が採用を計画した従業員の数は合計5万7520人。1年前の8倍近い数字である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中