アメリカの消費者は死んでいない
借金苦と高失業率で消費を控えていたアメリカ人がついに財布のヒモを緩めだした
明るい兆し 消費が拡大し、小売業の好調ぶりが目立つ Jonathan Ernst-Reuters
アメリカと、そして世界にグッドニュースだ。やはりアメリカの消費者は死んでいなかった。
アメリカの消費者は借金苦と高い失業率のトラウマから立ち直れず、今後も消費は停滞すると一般的には思われている。つまり、世界最大の経済国の景気回復が、他国よりも後れを取るということだ。アメリカでは消費者支出がGDP(国内総生産)の約70%を占める。消費の冷え込みは自国の足かせとなり、貿易相手国の利益にも悪影響を及ぼす。
この考えに異を唱えるのが、エコノミック・アナリシス・アソシエーツ社のエコノミスト、スーザン・スターンだ。消費者の購買力は既にアメリカ経済の回復を後押ししており、この傾向は来年も続くと彼女は言う。なかでも自動車と軽トラックの販売台数は、今年の1060万台から来年は1440万台に回復すると予測。住宅の売り上げも、今年の58万5000戸から来年は103万8000戸へと、ほぼ倍増を見込む。個人消費は今年0.5%減少したが、来年は4.8%上昇するという。パソコンから車、チーズまで、外国の輸出業者は恩恵を受けるだろう。
人々は借金を返したか破産した
近頃の個人消費の強さは「キャッシュ・フォー・クランカーズ」(燃費のいい車に買い換えれば助成金を出す制度)によるものとする考えを、スターンは否定する。彼女はまた、高額の負債や高い失業率による悪影響が誇張されてきたと指摘。実のところ、人々か抱える負債は劇的に減少しているという。
平均的な世帯の可処分所得のうち月ごとの利息や元金の支払いが占める割合は、07年8月に15.8%という最高値を記録した後、現在では13.5%にまで低下した。不況下ではかなり低い割合だと言える。アメリカ人は既に借金を返したか、そうでない人は自己破産してしまっている。さらに金利も低下。こうした要因が、負債という重荷を軽減した。
一方で株価と、株価ほどではないが不動産価格の回復も各世帯の純資産(資産から負債を引いたもの)を安定させている。スターンの見積もりでは、米世帯の純資産は今年3.7%増加し、来年は6.9%増加する。08年には17.2%も縮小していた。これも消費者を勇気づける要因だ。
確かに、9.8%という失業率はぞっとする高さだし、これからもしばらくは高いままだろう。スターンは来年の失業率を9.6%と予測する。だがこの数字に表れていないのは、職を失う人の割合が激減することだと彼女は言う。