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銀行

自己資本強化と貸し渋りの関係

2009年10月9日(金)16時13分

 金融危機に懲りた米財務省は、銀行の自己資本比率を高めるよう世界に呼び掛けている。聞こえはいい政策だが、貸し渋りや景気回復の遅れを招くのではないか。専門家2人に聞いた。

■リチャード・ボーブ(ロッチデール証券の銀行アナリスト) 
答えはイエス。現在の自己資本比率は1936年以来の最高水準だ。昨年の金融危機の際の問題はむしろ、投げ売り同然の価格にまで下落した資産の評価損を計上しなければならないことだった。米政府のメッセージは矛盾している。銀行が貸し付けを増やしつつ、同時に資本も増強することはできない。自己資本の積み増しを命じれば、貸し付けが締め付けられるのは明白だ。

■ダグラス・エリオット(ブルッキングズ研究所研究員) 
そうはならない。私の調査によると、自己資本比率の下限が4ポイント引き上げられても、ローンの金利は0・2ポイントしか上がらない。資本強化された銀行の経営が安定するメリットに比べれば、些細なことだ。通常、資本コストは貸し出しコストの5分の1にすぎない。銀行はローンの利率を操作する以外にも、資本を増強する手段をいくつか持っている。

■本誌の結論 
最も賢い方法は、銀行の自己資本比率と彼らが取るリスクの高さを連動させること。リスクが高いほど、より多額の資本が必要になる。新しい規制が実行されるのはおそらく2011年。幸いなことに金融機関には準備期間がたっぷりある。

[2009年10月14日号掲載]

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