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中東実は後退しているアラブ経済
1人当たりGDP成長率は30年前と変わらず、工業化はむしろ後退──国連報告書に見る中東経済のトホホな実情
砂上の楼閣 ドバイが火をつけた不動産ブームはレバノンにも広がったが(ドバイ、08年10月) Steve Crisp-Reuters
国連開発計画(UNDP)が21日、今年の「アラブ人間開発報告書」を公表したが、概して驚くべき内容ではない。詰まるところ「戦争=不安定=ビジネスに有害」ということだ。だが経済について述べた第5章は2つの理由で一読に値する。
理由1:GDPの乱高下
報告書は、中東・北アフリカ(MENA)地域の不安定性に関する疑問にかなりの程度答えてくれる。この地域の1人当たりGDP(国内総生産)成長率は、数十年にわたりジェットコースターのように激しく乱高下した末、80年の水準とほとんど変わっていない。
理由2:工業化は後退
アラブ世界の経済成長は極めて不規則なだけではない。
1人当たり(のGDP成長率)で見ると、アラブ世界の経済成長はかなり低い。それと相応して、生産部門(特に製造業)は不振が続いてきた。実際、現在のアラブ諸国の工業化は40年前よりも後退している......。石油主導の成長も労働市場にマイナスの影響を与えてきた。一部のアラブ諸国は現在、世界最高の失業率(とりわけ若者の間で)を記録しており、人間の安全保障に重大な影響をもたらしている。
「何一つ物を作る方法を知らない」
私が最近インタビューしたレバノン人の政治経済学者は、ドバイに端を発する不動産ブームがいかに(レバノンの首都)ベイルートを大きく変えたかを指摘していた。06年のイスラエルとの戦争の最中でさえ、ベイルートではクレーンや油圧ショベルが騒がしく動いていたという。
その一方でレバノンには輸出可能な生産部門がないことを彼は嘆いていた。「われわれは何一つ物を作る方法を知らない。わが国がどういった分野に強いのかも分からない」。それはアラブ世界全体も同じようだ。
だからこそINJAZ(アラブの学生に職や経済に関する講義・体験学習の場を提供する組織)のような活動が重要になる。
ヨルダンで始まったINJAZは先月、エジプトで起業家のコンテストを開催。その様子は米公共放送PBSの番組「フロントライン・ワールド」でも紹介された。楽観的で建設的な活動を見るのが難しいこの地域で、INJAZは新しい風(と良質な楽しみ)をもたらしている。