最新記事

仕事

今こそ見直せ肉体労働の価値

2009年7月13日(月)17時07分
ケーティー・ベーカー

 アメリカでは長年にわたり肉体労働から「知識経済」への脱却が奨励されてきた。その一方で、企業が生産を外注に頼り始めたため、オフィスワークも減っている。

 労働の在り方について考え直す時期かもしれない。プリンストン大学の経済学者アラン・ブラインダーの著作や、最近では哲学者マシュー・クロフォードの著書『ショップ・クラス・アズ・ソウルクラフト』が注目を集めている。

■見解 肉体労働は過去のもので、技術のない人や移民の仕事と見なされている。だが手を使う仕事(建設、修理、保守整備など)は世界的な外注化の流れに巻き込まれないことが分かっている。

 クロフォードによれば、つまらないオフィスワークよりもカネになるし、知的な満足感を得られる。

■裏付け シンクタンクを辞めてオートバイ修理工場を開いたクロフォードは自立的思考、独立独歩、手に職を持つことの関係を説得力をもって論じる。古代ギリシャでは「知恵」と「技術」は手先が器用であることも意味したという。

 ブラインダーは、労働はいずれ対面で行う個人サービス(医者など)と対面の必要がなく外注に出せる非個人サービス(X線写真を見て診断を下す放射線科医など)に分かれると予測する。

 彼によれば科学者、事務員などアメリカの非個人サービスの従事者は3000万~4000万人で、その経済的基盤は揺らぎ始めている。だが肉体労働は、将来的に賃金も需要も上昇すると思われる。

■結論 アメリカ人は子供をオフィスに閉じ込めることを思いとどまったほうがいいかもしれない。ハイテク未来に憧れる中流家庭には思考の大転換が必要だが、頭脳と手先を共に使う技能を学び直す時がきている。

[2009年7月15日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

訂正(7日配信記事)-英アストラゼネカが新型コロナ

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中