最新記事

米景気

アメリカのCEOは株を大量売却中

景気底入れを口にしながら自分の株は売りまくる経営者の本音は、お先真っ暗

2009年6月24日(水)17時01分
ケイティ・ポール

弱気が台頭 景気は底入れしたのかしないのか、疑心暗鬼から3日続落したニューヨーク株式市場(6月23日) Eric Thayer-Reuters

 景気回復論にもう一つの反証が表れた。「景気は底を打った。これからは成長だ」と語るCEO(最高経営責任者)たちが、その舌の根も乾かぬうちから個人の持ち株の処分を急いでいる。

 カリフォルニアを拠点とする投資調査会社トリムタブスの最新のリポートによると、企業の経営情報を知りうるインサイダーたち、つまり米証券取引委員会(SEC)に個人の金融資産を開示しなければならない大物たちは、4月、5月、6月と、連続で株を売り越している。

 今月これまでに、スタンダード&プアーズ(S&P)500社指数に入る米大企業の経営幹部たちは、26億ドル相当の株を売却した。もっと心配なのは、買うほうはたった1億2000万ドルだったこと。売りと買いのバランスが売りに傾いていることも弱気材料だが、買いが少ないという事実はそれ以上に経営者たちの本音を反映している。

売りと違って買いの理由は一つだけ

 人々が株を売る動機はさまざまありうると、トリムタブスの株式ストラテジスト、ビンセント・デルアードは言う。ストックオプション(自社株購入権)をもらっていたかもしれないし、住宅の購入を考えているかもしれない。

 だが、買いの動機はもっと単純だ。企業業績の将来に楽観的なら買うし、そうでなければ買わない。いま各社の経営状況を見た経営者たちの考えは、絶対に「楽観できない」だ。

「彼らは企業収益は悲惨な結果になり、株価は下落すると考えている」と、デルアードは言う。「『今は人生に一度あるかないかの買い時だ』と言って歩いている経営幹部もいるが、自分の金のこととなると反対のことをやっている」

 客観的に言って、状況はどれほど悪いのだろうか。トリムタブスは03年以降の記録しかもっていないため、たとえばITバブル崩壊後の01年の株の取引状況と比べてみることはできない。わかるのは、経営幹部が今年買った株は昨年と比べて8割も少ないということだ。

 今年1月から現在までにインサイダーが買った株は36億株だが、昨年の同じ期間にはそれが154億株だった。住宅バブルの絶頂だった06年には、340億株もの株を買っていた。一方、インサイダーが売却した株数も約半分になってはいるが、買いの減り方ほどではない。結局肝心なのは、彼らがいつ買い出すかだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ関税、米中経済減速に伴い豪経済を減速させる

ビジネス

スペースXなど3社、米国防総省から135億ドルの打

ワールド

インド、25/26年度成長率目標維持 米関税引き上

ビジネス

ゴールドマン、米景気後退確率45%に引き上げ トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 8
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 9
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 10
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中