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2009.12.15

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タリバン8年間の真実

2009年12月15日(火)12時06分
サミ・ユサフザイ(イスラマバード支局)、ロン・モロー(イスラマバード支局長)

第3章 米軍と政府は支持低迷、復活の好機

ユーナス 03年4月のある夜、われわれはトラック6台で国境を越えてアフガニスタンに入り、車をパキスタン側で待機させた。攻撃目標は(アフガニスタン東部)パクティカ州のマチュダ付近にある米軍基地だった。われわれは夜明けに攻撃を仕掛けた。米軍は完全に不意を突かれたと思う。

 約30分間、ロケット砲と迫撃砲で集中砲火を浴びせた。しかし、AK47を使えるほど接近することはできなかった。その前に米軍のヘリコプターが現れ、ロケットと銃弾の雨を降らせた。恐れおののいた私は腹ばいになり、必死で逃げた。轟音と爆発と煙の中で、6人の仲間が死んだ。アラブ人2人と部族民3人、アフガン人1人だ。

 それでも私は高揚した気分だった。戦うことでわれわれは明確な決意を示した。タリバンは復活したのだ。われわれは殉教者たちの血まみれの遺体をワナに運んだ。葬儀には数千人の地元民が参列し、殉教者の埋葬に立ち会えるのは名誉だと言った。この攻撃の話が広まると、多くの元タリバンがワナに集まり、仲間に加わった。

ハッカニ アラブ人やイラク人がわれわれのところにやって来て、イラクの反政府闘争で学んだIEDの最新技術と自爆攻撃の戦術を伝授した。アメリカのイラク侵攻は、われわれを助けたといえる。アメリカの注意がアフガニスタンからそれたからだ。04年頃まで、われわれの武器はソ連との戦争で使ったAK47やRPGなどだった。しかしその後、新しい武器と技術を手に入れ、殺傷能力は向上した。

■証言者6人のプロフィール

ハーン タリバンがガズニ州で再び活動しはじめたという噂を耳にしたのは、04年の半ばだった。ほかの地区に住む友人や親類から、夜になると武装した男たちがバイクで村に現れるようになったという話を聞いた。それから2、3カ月以内に活動の兆候が至る所に表れ始めた。最初は店やモスク、公共施設に、(アフガニスタンのハミド・)カルザイ(大統領)やアメリカ人に協力するなと警告するタリバンのシャブナーマ(夜の手紙)が残されるようになった。05年に入ると、タリバンは警官や役人、スパイ、米軍に協力した長老を標的とした暗殺を開始した。

 ある日の深夜、私の家のドアを誰かがノックした。警官が私や兄弟を逮捕するためにやって来たのかと思ったが、ドアを開けてみると、父の元学生の1人だった。肩にAK47を担いだ彼は、タリバンの副司令官になっていた。一緒にいた2人のタリバンもAK47を手に持ち、ベルトには手榴弾を付けていた。政権崩壊後、タリバンと会ったのはそれが初めてだった。

 われわれは彼らを家に泊め、翌朝早く一緒にモスクへ行った。父の元学生は、カルザイと異教徒の側に付いてイスラム教を裏切った者の名前を読み上げ、政府や米軍と関係のある仕事をすべて辞めるように警告した。1週間後に戻ると言って、彼は話を終えた。

モハンマド パキスタンから国境を越えて入ってきた最初のグループの大部分は、アラブ人の資金と組織と作戦に頼り切っていた。アフガニスタンのタリバンは弱く、無秩序だった。しかし、状況は徐々に変わり始めた。

 村人を苦しめた米軍の作戦や民間人を犠牲にする攻撃、カルザイの腐敗した警察などのせいで、住民はわれわれに味方するようになった。こそこそ隠れて奇襲攻撃をする必要もなくなった。われわれは公然と村を訪れ、村民から緑茶と食べ物のもてなしを受けた。逆にカルザイの警官と役人は、囚人のように自分たちの居住区に引き籠もるようになった。

ユーナス 最初の数回の攻撃の後、神が資金調達ルートを授けてくれたようだ。金は湾岸諸国からアラブ人に流れているという話だ。本格的なジハードが始まったのは05年初めだった。ジャラルディン・ハッカニの率いる部族の戦士たちがわれわれの側に付いた。米軍とパキスタン政府が彼の兄弟や親類を逮捕したからだ。

 ハッカニは息子のシラジュディンに反米闘争の指揮を命じた。それが本当の分岐点だった。それまでパクティア州やパクティカ州、ホスト州の村人は、タリバンはもう終わりだと思っていた。彼らは米軍や地元の軍閥が組織する民兵に加わり、われわれと敵対した。だがハッカニの部族の支援を受けた後、われわれは米軍やカルザイに協力したアフガン人を拘束し、首を切った。彼らの家族や親族は震え上がり、村を出て町や都会に引っ越した。われわれの支配はゆっくりと回復していった。

ハーン 父の元学生は約束どおり1週間後に帰ってきた。私は彼と行動を共にすることに決め、政府や米軍に協力した連中の暗殺を手伝った。できれば殺したくなかったが、私は必ずイスラム体制を復活させ、米軍やその協力者の裏切り者を追い払うと心に誓っていた。05年終わり頃までに、ガズニ州のタリバン兵はどんどん増えていった。私のような新入りもいたが、パキスタンから帰ってきた元タリバンもいた。同時にRPG砲や地雷、爆弾も届くようになったが、ほとんどは古くてさびていた。

 私のグループにはRPG砲3門と迫撃砲1門しかなかった。さびたロシア製の地雷もあったが、きちんと爆発する確率は30%程度しかない。だから輸送隊や建設作業班、官舎に対して限定的な攻撃を短期間しか行えなかった。最初の頃の攻撃はあまりうまくいかなかったが、われわれは武器の使い方を徐々に学んでいった。たとえ目標に当たらなくても、迫撃砲を撃つだけでも意味があった。われわれが侮れない集団であることを示せるからだ。

 米軍とアフガニスタンの親米派は次々に間違いを犯し、罪のない人々を殺したり逮捕した。ガズニ市に近いダヤク地区に、ロシア人がいた時代から共産主義を信奉する村があった。村人がわれわれを支持したことは1度もなかった。だが、あるとき警察が村を襲い、モスクで長老たちを殴って逮捕した。この事件の後、この村は共産主義時代の無礼をわびるメッセージをわれわれに送ってきた。

アフンドザダ タリバンの勝利の知らせが広まるにつれて、私は新たに加入した若者たちのグループを組織することができるようになった。彼らは元タリバン兵より賢く、戦闘意欲も高かった。

 しかし武器と資金が不足していた。そこで私はダドゥッラー師を訪ねた。彼は06年に30人を引き連れてヘルマンド州に移り、数カ月後に戻ってきたときには、それぞれ数十人の部下を持つ300人の指揮官を組織していた。さらに自爆攻撃の志願者を数百人集め、訓練を施していた。彼の復帰は5年続きの干ばつ後の雨のようだった。私が必要なもののリストを渡すと、彼は言った。「覚えておきなさい。抵抗運動は想像できないほど大きくなる。われわれはアフガニスタンの支配者に戻る」

 翌日、彼はノートのページを破り、何かを書き付けて私にくれた。そこには、ある男に会えば助けてくれると書いてあった。パキスタンでその男を見つけると、彼はダドゥッラー師の手紙に口づけした。2週間後、男は兵器や必需品をすべて手配してくれた。ダドゥッラー師は多くの仲間にこのような手紙を与えていた。

モハンマド ザブル州の部隊にIEDを作るための材料を送ったとき、リモコン装置を入れ忘れたことがあった。そこで数個の旅行かばんにリモコンを隠し、数冊の本と服を詰めて届けることにした。(カイバル峠と交わる)トルハムで警察にかばんを開けろと命じられた。どこにも逃げ道はなかった。私は仕方なくかばんの鍵を探し始め、税関に長い列ができた。すると、いらいらした警官は言った。「時間がかかり過ぎだ。行け」

 別の夜、私はリモコン装置と爆薬を密輸するためにカブールのホテルにいた。アフガニスタンの警察と情報機関がホテルの宿泊者全員の検査を行った。仲間と私はリモコンが入ったかばんを洗面所に隠した。警察はわれわれのポケットを調べたが、神は彼らの目を洗面所に向けさせなかった。もし装置が見つかっていたら、私は刑務所で人生を終えていただろう。

ハッカニ 07年に私は初めてアフガニスタンに帰国した。南部でタリバンの部隊や長老、村人と話をして、新しく仲間に加わる若者を集めた。オマル師からは、ジハードへの支持や援助、参加を奨励するために国境の両側の町や村を旅する仕事を任された。

 06〜09年に私は数百人の新兵を集めた。8月には、20日間でアフダニスン国内の8州を回った。カルザイ政権の不人気は、われわれにとって大変な助けになった。05年の時点で、一部のアフガン人はカルザイが好ましい変化をもたらすと思っていた。だが今では、ほとんどのアフガン人がタリバンこそアフガニスンの将来を握る存在だと考えている。われわれの抵抗運動は日を追うごとに勢いを増している。

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