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クロード・レヴィ=ストロース(フランス/人類学者)

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クロード・レヴィ=ストロース(フランス/人類学者)

The Pure Intellectual

構造主義などで知られる20世紀を代表するフランスの「知性の巨人」。89年のインタビューでは知られざる「日常の顔」を垣間見せた

2009年12月08日(火)12時02分

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[1989年10月26日号掲載]

----アメリカとフランスの知識人を比べると、どんな違いがあるのか。

 アメリカでは、一般市民と知識人が分離している。フランスでは、新聞その他のメディアが両者を結びつける役割を果たしている。フランスの政治家がアメリカの政治家より知的かどうかは、何ともいえない。フランスではこれまで何度も、教育のない者が政権を担当している。政治家に知性は必要ない。しかし、品性は欠かせない。周囲の知識人から助言を受けることができるからだ。

----あなたはニューカレドニア紛争の際などに発言を避け、フランスの若い知識層の怒りを買った。中国の天安門事件については、当然何か感じていると思うが

 もちろん感じるところはある。だが、それは心の中の問題だ。科学的・専門的分野で評価を得た知識人が、まったく別の問題で一般の人間と同じような見解を述べ、何か偉そうに扱われようと期待するのは危険だ。中国に関する報道にはすべて目を通したが、感じたことがあっても公にする気はない。私がまちがっている可能性もあるからだ。

----あなたは近づきがたい人だといわれているが、電話帳に名前が載っている。

 幸いなことに、電話帳をのぞいてみようという酔狂な人間はあまりいない。もっとも、私のところには毎年、アフリカなどからブルージーンズの注文が舞い込む。
 フランスの企業家がジーンズ製造会社に私の名前を貸してほしいと言ってきたことがあり、私は言ってやった。「そんなことはできん。私はインテリなんだ」。その男の言い分はこうだ。「この計画をひとたび公表すれば、本家のリーバイ・ストラウス社が音を上げて、しこたま払ってくれる」
 
----音楽は好きだが閉所恐怖症なのでコンサートに行けないし、レコードは「ぐるぐる回り、いつ終わるともしれない」ので「苦悩」のタネだと、あなたは語っている。どうやって音楽を楽しんでいるのか。

 クラシック音楽専門のラジオ局を聞いている。この放送におしゃべりはないから。人間の声はどうにも我慢できない。

----あなたの著書の中で、よく冗談を言っている。ユーモアのない学者先生と衝突したことはないか。

 アカデミックな世界では、ユーモアのセンスのない人のほうが多いのがふつうだ。「野生の思考」の英語版を出すとき、私はタイトルに『ハムレット』からの引用「パンジー、もの思いの花」を使いたかったのだが、版元の反応にびっくりした。その学術出版社は、英語の「パンジー」には全然違う意味(同性愛)があり、とても使えないと言ってきたのだ。

----ル・モンド紙はあなたを「最後の思想の巨匠」と評したが。

 ル・モンドは、「正しい思想」の持ち主でない私をひどく嫌っている。良識と雅量が同紙のお気に入りだ。穏健な左翼のキリスト教的基準からすれば、私には寛容さが足りない。私は昔ながらのアナーキストなのだ。

----秘書も雇えないと、引退後にテレビで発言していたが。

 私がもらっている年金ではとても雇えないが、かつて勤めていた人類学研究所が秘書を一人つけてくれている。テレビに出た数日後、ある女性から手紙を受け取った。お金と時間があり余っているので、お手伝いをしたいというのだ。その女性というのが、シャネルの有名なモデル、イネス・デラフレサンジュだった。「あなたに来られたら、見とれてばかりで仕事が手につかないでしょう」と言って、お断りしたがね。

----あなたの著作には食べ物の比喩がずいぶん出てくるが。

 若いころは、いろいろ料理を作り、新しい料理を発明したものだ。たとえば注射器を使ったゆで卵。卵にポートワインを注射してゆでるのだが、出されたお客は風変わりな味に驚いていた。
 
----著書『悲しき熱帯』の中の原住民の写真はすばらしい。なぜ展覧会を開かないのか。

 未公開の写真がたくさん戸棚にしまってある。私の死後、発見されることだろう。写真は好きだったが、もううんざりだ。今では旅に出てもカメラは持っていかない。すでに何もかも写真に撮られてしまった。写真を撮ることにばかり気をとられていると、よく観察できないという気がする。

----反フェミニストと呼ばれているが。

 私は反フェミニストではないし、現にコレージュ・ド・フランスを退官するときには、後任に女性を選んだ。ただ、女性に手を焼いたことはある。たとえばシモーヌ・ヴェーユだ。私たちがソルボンヌの学生だったころ、彼女はいつも私をいらいらさせた。彼女は自分が常に正しいと思っていたのだ。だが、彼女にはある種の女性としての魅力があった。素敵な黒髪をしていて、笑顔もよかった。肉体的には弱々しいが、知性の面ではそんなことなかったね。

----20年後には自分の業績も「時代遅れ」になると言っているが。

 当然のことだ。一人の人間が望みうるのは、「その時代の科学を進歩させた」と人々に評価してもらうことだけだ。科学は日進月歩なのだから。

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