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2009.09.29

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ポスト胡錦濤、習近平のスゴ腕

2009年9月29日(火)12時52分
メリンダ・リウ(北京支局長)、ジョナサン・アンズフィールド

汚職と闘うミスター・クリーン

 こうした外国からの称賛は、以前なら出世の足かせになったかもしれない。だが今は違う。共産党は次期総書記の最有力候補に、党内初の現代的政治家である習を選んだ(党員や民衆の間で習の人気が高いのは、人気歌手・彭麗媛<ポン・リーユアン>の夫だからでもある)。

 それでも欧米人の目から見ると、習はどこかあか抜けない印象を受ける(ネット百科事典ウィキペディアの英語版には「武骨な田舎者」という表現が載っているが、中国国内では閲覧できない)。先日の党大会では、椅子にふんぞり返り、短めのズボンのすそから安物の白いソックスをのぞかせる映像が流れた。

 今も謹厳実直を好む傾向が強い党の内部で、太子党という特権階級の一員である習が高い人気を得られるのは、この泥臭いイメージのおかげでもある。若いころに農村部で苦労した経験があるので、貧しい地方の党官僚だった胡錦濤からみても受け入れやすい。

 一方で、高級幹部の息子という生まれと経済発展の著しい沿海部で実績を積んだ経歴は、今も隠然たる影響力をもつ江沢民(チアン・ツォーミン)前総書記を中心とする「上海閥」にもアピールできる。

 習には、高級幹部の汚職問題が大スキャンダルに発展した上海市と福建省で組織の立て直しに尽力した経験もある。習は上海市党書記に就任早々、幹部たちを呼んで資産の公開を命じたという。

 その結果、「習はとてもクリーンな人物とみられるようになった。民衆はもう汚職はこりごりだと考えている」と、上海に拠点を置くある欧米企業の首脳は語る。

 中国の民衆は、汚職の代わりに習近平を手に入れた。中国らしい部分を残した現代的な共産党のニューリーダーを。

[2007年11月 7日号掲載]

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