最新記事

植松伸夫(ゲーム音楽作曲家)

世界が尊敬する
日本人 part2

文化と時代を超えたジャパニーズたち
最新版は7月1日発売号に掲載!

2009.06.29

ニューストピックス

植松伸夫(ゲーム音楽作曲家)

ゲームを変えた音の魔術師

2009年6月29日(月)15時30分
リオ・ルイス(英タイムズ紙記者、『ジャパナメリカ日本発ポップカルチャー革命』を執筆補佐)

 私はブルース・スプリングスティーンが好きだ。バート・バカラックもファッツ・ウォーラーも好きだ。何年も前から聴いているし、愛用のiPodには彼らのアルバムが詰まっている。

 でも植松伸夫(48)の曲は、この3人の多彩な作品を合わせたよりもたくさん聴いてきた。ざっと計算してみると、1987年から今日までに延べ64日にもわたり聴き続けた勘定になる。壮大な曲もあればもの憂げな曲もあり、勝利を祝うアルペジオもある。シャワーを浴びるときには口ずさみ、今もリビングルームに響いている。

 なぜなら私が『ファイナル・ファンタジー(FF)』にはまっているからだ。『FF』の第1作が発売されたのはちょうど20年前のこと。以来、私は日本に興味をいだき、ついにはそのゲーム文化について本を書くまでになった。気がつけば『FF』の世界は、あの007シリーズを超える広がりを見せている。

 その『FF』ワールドを支えているのが植松の音楽だ。その美しく複雑な曲は、単なるテレビゲームを壮大な叙事詩に変えた。デジタルなゲームにヒューマンな感情を与えるために音楽を使うという手法は、そもそも植松が生み出したものだった。

 植松の音楽性は、オペラのような『FF』と完璧にマッチしている。植松が多用するのはワーグナー風の旋律だ。繰り返し登場するキャラクターにはそれぞれのライトモチーフがあり、主人公には勝利と敗北を表す曲がある。ときには昔聴いた旋律が繰り返される。出来事の来歴や手がかりをほのめかすためだ。

 多くのファンはゲームで彼の曲に親しんでいるが、曲だけ聴いても素晴らしい。04年にロサンゼルスで行ったコンサートのチケットは完売。翌年には全米ツアーも開かれた。最も有名な曲「アイズ・オン・ミー」は、世界中のファンに支持されている。

 熱狂的な『FF』のファンたちは、ゲームに疲れるとインターネットに接続し、チャットで世界中の仲間と交流する。そんなときも、BGMで流すのはたいてい植松の音楽だ。

[2007年10月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪もパレスチナ国家承認へ、9月国連総会で イスラエ

ビジネス

中国に米国産大豆購入拡大を要望、トランプ氏「早急に

ワールド

イスラエル、アルジャジーラ記者を殺害 ハマスのリー

ワールド

フィリピン大統領、台湾有事巡る発言で中国が「誤解」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 2
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 3
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋肉は「光る電球」だった
  • 4
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 7
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中