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2009.06.29

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中沢啓治(漫画家)

原爆の悲劇と希望を描く

2009年6月29日(月)15時44分
コリン・ジョイス(東京)

Peter Blakely-Redux

本人が戦争と核兵器の恐ろしさを忘れないように――中沢啓治(66)はそんな思いから、マンガ『はだしのゲン』を描いた。

 今年、全10巻の英語版が完結。アメリカのコミック作家で、ナチスのユダヤ人大虐殺を描いた『マウス』の作者でもあるアート・スピーゲルマンは、序文でこう述べている。「ゲンは私の心をとらえて離さない。説得力のある誠実な描写が、広島で起きた信じがたい惨事を重い現実として伝える。この作品は冷徹な歴史の証言者だ」

 今では『はだしのゲン』は、フランス語、ドイツ語、ロシア語でも読める。アニメ版には、ポルトガル語やポーランド語の吹き替えもある。雑誌の連載開始から30年余り、この作品は世界中の人々に支持されている。

 国境を超えて人々の心を揺さぶるのは、核兵器の非人間性ではなく、ゲンの人間らしさだ。「ゲンの倒れても生きようとする意志やたくましさが共感を呼んでいるようだ」と、中沢は語る。廃墟と化した広島で泣き(そして笑う)ゲン少年の姿から、人々は戦争の恐ろしさだけでなく、希望の光も同時に感じ取る。

[2004年10月20日号掲載]

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