最新記事

中国ポルノ規制の実態は言論弾圧?

中国の真実

建国60周年を迎える巨大国家の
変わりゆく実像

2009.04.24

ニューストピックス

中国ポルノ規制の実態は言論弾圧?

突然始まったわいせつなウェブサイトの摘発強化に潜む政府の本当のねらいとは

2009年4月24日(金)18時58分
エフゲニー・モロゾフ(オープン・ソサエティー財団研究員)

ネット上の言論弾圧が始まった(09年1月、上海のネットカフェ)
Aly Song-Reuters

 09年に入って早々、中国政府は新たな取り締まりを始めた。ねらいはインターネット。政府系団体であるインターネット違法悪質情報通報センターが、「社会道徳を破壊し、若者の肉体的・精神的な健康をむしばむ低俗な内容がある」と、検索大手グーグルや国産検索エンジン百度(バイドゥ)を含む19の人気ウェブサイトの実名を公表した。1月25日までに1250以上のサイトが閉鎖され、41人が逮捕されている。

 今回の取り締まりでは、半裸の女性の写真や動画を掲載したサイトや、わいせつな内容につながるグーグル検索のリンクも摘発された。同じ頃、共産党の機関紙である人民日報のウェブ版が人気女優チャン・ツィイーのビキニ姿の盗撮写真を掲載し、国営通信新華社のウェブサイトが「中国でいちばんホットな美女たち」というタイトルのスライドショーを載せていたにもかかわらず、である。

 独裁政権によるわいせつ物の検閲強化は、反政府的な言論を弾圧する煙幕であることが多い。イラン政府は最近、10万のポルノサイト閉鎖に紛れて反政府的な複数のサイトを閉鎖した。ネットの検閲問題に取り組む欧米4大学の共同プロジェクト、オープンネット・イニシアチブの調査によれば、ベトナム政府もわいせつ物調査に合わせて政治的に微妙な内容のサイトを検閲している。

 中国の取り締まりも例外ではない。新しい化学製品プラントに対する抗議など、論争になる事件を報道してきた中国有数のブログも、今回の「粛清」の犠牲者になった。

 中国のネット事情に詳しい元CNN北京支局長のレベッカ・マッキノンによれば、「歴史的にみて、中国でポルノの検閲に用いられるテクノロジーは、結局のところ政治的な内容の検閲に使われるほうが多い」。今回のケースはまさにこれにあてはまる。北京五輪を機に閲覧可能になっていたアムネスティ・インターナショナルなど人権団体のサイトも、再び閲覧できなくなっている。

腐敗を暴く「人肉検索」

 09年はチベット蜂起50周年、天安門事件20周年、そして中華人民共和国建国60周年と物議をかもす記念日が続く。中国政府はその前に規制を拡大しているが、急な取り締まりの原因は08年12月に中国の知識人らが民主・自由・人権の拡大を求めてネット上で公表し、議論が広がっている「08憲章」の影響とも考えられる。

 取り締まりの開始は、インターネットが政府の腐敗を暴くための効果的な道具になろうとしている矢先のことでもあった。

 ネット上で個人情報の提供を呼びかける「人肉検索エンジン」を駆使して、「正しい道」から逸脱した指導者を発見して攻撃するネット自警団もいる。南京市不動産局局長の周久耕(チョウ・チウコン)のケースでは、1万5000ドルもするスイス製腕時計をつけて公的な写真に写っていたところをブロガーが追及。キャデラックで通勤し、1箱20ドルもする高級タバコを吸うことがネットで糾弾され、08年12月に周の不正に関する正式調査が始まった。

レストランで若い女性を襲ったと告発され、解雇された深セン市海事局の共産党委員会書記、林嘉祥(リン・チアシアン)の場合は、ネチズンが林の本名と女性と一緒にいる映像をネットに流し、捜査を要求した。

 政府が反政府派をあぶり出す方法はさらに巧妙になった。当局は検索エンジンを利用した調査に頼るよりも、民間企業を雇って反政府派を割り出すための情報の綿密な分析を始めた。こうした企業は、有害コンテンツの削除を命じることもできる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官「意図的に標的にせず」、イラン学校攻撃巡

ワールド

景気が弱い時でも利上げ必要な場合ある=カナダ中銀副

ワールド

クリントン氏、富豪巡るトランプ氏発言明かす 議会証

ワールド

グリーンランド鉱業部門に関心高まる、トランプ氏の領
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 7
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 8
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    【トランプ関税はまだ序章】新関税で得する国・損す…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中