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中国の真実
建国60周年を迎える巨大国家の
変わりゆく実像
成長をかけた中国の西部大開発
沿海部の輸出低迷を受けて、経済成長の中心を広大な内陸部へ移す西部大開発プロジェクトが全速で進行中
中国のニュースに詳しい人も、重慶の名前にはなじみがないかもしれない。長江(揚子江)流域に広がるこの地方都市は、産業と物流の拠点として「中国西部への玄関」を名乗る。
3200万人の住民の70%は小規模農家。1人当たりの収入は増えているが、上海や北京などの大都市には及ばない。それでも重慶や、より小さい多くの内陸部の都市は、中国の景気回復の希望の星だ。すでに重慶は不景気な沿海部だけでなく、中国全土をしのぐ勢いを見せている。
重慶の09年の経済成長予測は12%。欧米の大半の国にとって夢のまた夢であるのはもちろん、中国の国家目標である8%も超える驚異的な数字だ。しかも温家宝(ウエン・チアパオ)首相は、国の目標達成はむずかしそうだと認めている。
この異例の成長は、主に政府のカネのおかげだ。2年にわたる5860億ドル規模の景気刺激策のうち、60%以上が内陸部に向けられている。なかでも重慶は約340億ドルで、人口1人当たりの額は全国13億人平均の2倍に相当する。重慶と蘭州を結ぶ路線など鉄道や道路の大規模な拡張計画への投資は2200億ドル。長江の港と内陸都市を西方の市場と結び、東の大都市ともつなぐ構想だ。
これが消費意欲を刺激し、長江の2大貨物である石炭と鉄鉱石の需要を押し上げている。長江の港は09年1月の月間貨物取扱高が半年ぶりに増えた。「重慶は新しい成長サイクルに入っている」と、王鴻挙(ワン・ホンチュイ)重慶市長は予想する。
数字が王の言葉を裏づける。09年に入り、インフラなど建築部門の投資は08年の同時期に比べて35%増。労働力と不動産価格がまだ比較的低いため、沿海部に工場があった企業が移転している。ヒューレット・パッカードや家電大手の江蘇白雪電器も新しい工場を建設している。
移転は中国政府のお墨つきだ。政府は国の成長の重心を、輸出経済モデルが崩壊している沿海部から広大な内陸部に移す「西部大開発」を全速力で推進しようとしており、重慶はその中心とみなされている。奥地にある40万以上の村に住む7億5000万人の農民の生活を向上させ、ゆくゆくは彼らを消費者にしようというわけだ。
その目標は3月の全国人民代表大会でも前面に打ち出された。温首相は、地方の農業と社会計画の予算を20%増の1046億ドルとし、「地方に電子製品を送ろう」という全国運動を加速させてテレビ、携帯電話、パソコンを地方で13%値引きすると発表した。一方で、重慶など内陸部では新しいショッピングセンターや映画館、スポーツセンターなどの娯楽施設が次々に建設されている。