最新記事

藤田哲也(気象学者)

世界が尊敬する日本人

国境と文化の壁を越えて輝く
天才・鬼才・異才

2009.04.24

ニューストピックス

藤田哲也(気象学者)

気象界のミスター・トルネード

2009年4月24日(金)18時14分
フレッド・グタール(サイエンス担当)

University of Chicago Photo

 アメリカの天気予報官の間では、今は亡き気象学者、藤田哲也の名前はおなじみだ。藤田が提唱したトルネード(竜巻)の規模の基準は「フジタスケール」として知られ、今でも広く使われている。

 真にクリエーティブな科学者らしく、藤田の原動力は好奇心だった。若いころ、山に登って雷雲を調査しているうちに、冷たく湿った下降気流の存在に気づいた。

 藤田はシカゴ大学の研究者が下降気流の計測を始めたことを知り、53年に渡米。シカゴ大学の研究員になった。

 藤田の型破りな研究方法は論議を呼んだ。彼は飛行機から気象を観察し、直感でハリケーンなどの仕組みを推測した。その手法ゆえ、仮説が仮説で終わることも多かった。だが彼の超人的な勘は、気象学という新しい学問の進歩に重要な役割を果たした。

 米大気研究所の科学者ジム・ウィルソンは98年、藤田の死を悼んでこう語った。「藤田は直感の人だった。普通の研究者が想像もしないようなことを思いついた」

 藤田は71年、実際の被害の程度などをもとにトルネード階級表を考案した。気象学者らはすぐに、このフジタスケールを基準に採用。藤田には「ミスター・トルネード」の愛称が贈られた。

[2006年10月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ、サウジ会合の結果を分析中 「協議内容公表せず

ワールド

豪政府が予算案発表、新たな減税盛り込む 財政収支は

ワールド

独IFO指数、3月は86.7に上昇 景気回復期待高

ビジネス

米個人消費が鈍化、物価高や経済見通し悪化で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 7
    止まらぬ牛肉高騰、全米で記録的水準に接近中...今後…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒.…
  • 10
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中