- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- 靖国参拝で崩れた、真珠湾追悼の「和解」バランス
靖国参拝で崩れた、真珠湾追悼の「和解」バランス
Hugh Gentry-REUTERS
<安倍首相とオバマ大統領の真珠湾追悼は、広島と対になる相互性もあり、外交的に評価できる。ところが、直後に防衛相が靖国神社を参拝したことで、日米が打ち出した「和解」のバランスは崩れてしまった>(写真:真珠湾の日米共同追悼は成功だったと言えるが)
安倍首相とオバマ大統領の真珠湾献花については、「スター・ウォーズ」のヒロイン、レイア姫を演じたキャリー・フィッシャーの急逝というニュースと「扱いを争う」という妙な事態となりました。
そうではあるのですが、例えばCNNでは録画ながら両首脳のアリゾナ・メモリアルでの黙祷シーンはカットせずに放映されています。オバマより安倍首相が深く頭を垂れ、しかもアメリカの常識では極めて長い黙祷をして、大統領に促されて頭を上げるという映像はバッチリ流れていました。
その後のスピーチについても、原文では「その御霊よ、安らかなれ・・・」と祈るように語った部分が、'Rest in Peace, Precious Souls of the Fallen'という訳でアメリカには伝わっています。直訳すると「戦いに斃れし尊き魂に平安あれ」というような語感であり、アメリカ人の心にはスッと入っていったように思います。
報道の全体について言えば、日本では地上波にあたる三大ネットワークなどでは、「キャリー・フィッシャーの訃報」におされて小さな扱いになっていますが、ニュース専門局に加えて、新聞各紙の扱いはかなり大きなものとなりました。
例えばニューヨーク・タイムズでは、翌日の朝刊の一面トップで黙祷する両首脳の大きな写真がカラーで掲載されています。また記事としても、両論併記で大きな記事が2本出ていました。一方は歴史的意義があるという評価で、もう一方は「安倍=オバマ」が上手く行き過ぎたので「オバマ抜きの日米関係」には不安があるという論評でしたが、これも今回の訪問が立派であったということに異論を差し挟むものではありません。
今回の共同献花というのは、そんなわけで昨年の米議会演説の時点よりも、さらにアメリカでの好感度は増したように思います。外交として極めて成功であったと評価できるでしょう。その時点ではそんな評価ができます。
【参考記事】意外とトランプ支持者にウケた?真珠湾訪問「ショー」
ところが、問題はその後でした。真珠湾での一連の行事に同行し、しかもアメリカのテレビにも何度も大きく姿が写っていた稲田朋美防衛相が、帰国したその足で靖国神社を参拝しているのです。
兆候はありました。安倍首相の真珠湾献花に前後して、留守を守っていた今村雅弘復興相が靖国神社を参拝していたのです。その時点では「日本の一部世論を意識すると、安倍首相の真珠湾献花は謝罪ニュアンスが伴うので、そうでもしないとバランスが取れないのか」というような嫌な感じがしただけでした。
ですが、稲田防衛相が参拝したとなると、これは話が違います。3つ大きな問題点があるように思います。
1つは、これでは、2017年以降少しずつ呼びかけを行って、今度は中国との相互献花・共同追悼の外交を進める、という期待感に水を差すということです。内外に抵抗の予想されることだけに、慎重に進めなくてはなりませんが「いきなりマイナスからのスタート」ということになったわけです。
環境活動家のロバート・ケネディJr.は本当にマックを食べたのか? 2024.11.20
アメリカのZ世代はなぜトランプ支持に流れたのか 2024.11.13
第二次トランプ政権はどこへ向かうのか? 2024.11.07
日本の安倍政権と同様に、トランプを支えるのは生活に余裕がある「保守浮動票」 2024.10.30
米大統領選、最終盤に揺れ動く有権者の心理の行方は? 2024.10.23
大谷翔平効果か......ワールドシリーズのチケットが異常高騰 2024.10.16
米社会の移民「ペット食い」デマ拡散と、分断のメカニズム 2024.10.09