レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい
2010年の幕開けとともに、ベトナムの首都ハノイは建都1000周年という歴史的な瞬間を迎えた。約10世紀に及ぶ中国による支配を経て、ベトナム初の本格的な統一王朝となった李朝の創始者李公蘊(リ・コン・ウァン)がこの地に遷都し、昇龍(タンロン)と名付けたのが1010年。以来、中国による再度の支配やフランスによる植民地化、日本軍による進駐やベトナム戦争中の北爆など、ハノイは諸外国に翻弄されてきた。
2009年、写真家のアンドレ・リュッツェンが節目の年を迎える前年のハノイを訪れた。ベトナムが市場経済に転換してから20年余り。人口600万を超える首都でカメラが捉えたのは、伝統的な人の営みと歴史の痕跡、そして資本主義のかけらが入り乱れる雑多な街の姿だった。
ハノイ中心部の舗道は、今でも料理や食事、娯楽のための生活空間であるとともに、商業や社交を営む公的空間だ。
多くの家族は舗道にはみ出すように暮らしたり、そこで菓子を売ったりしている。窓のない小さな部屋にぎゅうぎゅう詰めで住んでいる人々は、熱気の籠もる屋内よりも外にいたほうが心地いいらしい。特に夜になると、公的空間とプライベート空間の境目が薄れていく。
PHOTOGRAPHS BY ANDRE LUETZEN-LAIF


