技能実習制度の適正化が10年後の日本経済を潤す源泉に?
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<2016年11月に公布された技能実習法。問題の多かった技能実習制度を適正化することを目的とした新法だが、一見無関係な観光産業にも影響を及ぼすかもしれない>
【シリーズ】日本の観光がこれで変わる?
日本を訪れた外国人観光客の一部は、東京や大阪などの大都市をめぐって驚いているかもしれない。日本は移民社会ではなく、外国から単純労働者を受け入れていないと聞いていたのに、お店やレストランでは外国人がたくさん働いているじゃないか、と。
だが、実はそんな観光客が接点をもたない産業の現場には、さらに多くの外国人労働者が存在している。いわゆる技能実習生たちだ。
「技能実習生」という言葉を目にしたところで、ピンとこない人も少なくないだろう。
技能実習制度は、日本国内のさまざまな業界における技能を外国人が修得することによって、発展途上地域への技術移転を図り、先進国としての国際的責任を果たすことを目的とした制度だ。外国人が実際に職場で働くことを通じて、日本独自の技術や企業文化などを修得してもらい、ゆくゆくは母国でその技能が活用されていくことを目指す。日本政府としては、国際貢献ならびに多国間交流を働きかけたいのである。
ただし、技能実習制度をめぐっては、こうした法令上の建て前と、現場の本音とが食い違っている。
当の来日外国人は、多くの場合、物価の高い日本で稼いだお金を母国に持ち帰りたいがために技能実習生になろうとする。その実態において、大半は出稼ぎ目的である。
一方、技能実習生を受け入れる国内の労働現場では「労働力不足の解消」が主な目的に据えられている。なかには、労働基準法や最低賃金法といった労働法規を無視して、技能実習生を「安価な労働力」として乱用してきた現場もあると、これまで報じられてきた。外国人の失踪や過労死、あるいは会社を相手取っての提訴など、さまざまなトラブルが発生しているという。
長時間労働や残業代未払いの横行する「ブラック企業」がマスメディアで大きく取り上げられ、社会的な責任が問われているが、一部の技能実習生が置かれている苛烈な労働環境についてはどうなのか。
日本人だけでなく、外国人の労働問題も見過ごしていいわけではない。技能実習生をめぐる労働環境を早急に改善させなければ、中長期的なレベルで、日本社会にじわじわとダメージが蓄積されることになるだろう。
【参考記事】日本の会社はなぜ「ブラック企業」になるのか
技能実習生のほとんどはアジア系の外国人で占められている。つい数年前まで中国籍が大半だったが、ここにきて急増しているのはベトナム国籍の実習生である。2015年には中国人を人数・割合ともに追い抜いて最多となった(「研修・技能実習に関するJITCO業務統計」より)。ちなみに、日本国内に滞在する技能実習生は約21万人にものぼる(2016年6月末現在)。
その技能実習生たちが母国へ帰ったとき、日本という国のことを家族や友人にどう説明するだろうか。その説明を起点とする噂話の拡散によって、日本の国際的なイメージはいかようにも変化する。観光立国を目指す日本にとって、イメージの悪化は死活問題だ。